【新車のツボ33】トヨタ・ランドクルーザー 試乗レポート
トヨタは巨大メーカーだから、いろいろな側面をもつ。なかにはトヨタに「利益優先で割り切ったクルマづくり」というマイナスイメージを持っている人もいるかもしれない。
そのイメージが完全なマトはずれとはいわない。トヨタ車はよくいえば「地域最適化」が徹底している。トヨタは技術力も開発能力も基礎研究レベルも世界トップクラスで、欧州仕様ではしっかり高速性能を突き詰めるいっぽうで、日本仕様ではあえて高速性能を割り切って、かわりに「価格の安さと見た目の装備充実」を優先したクルマづくりが見られるのは事実だ。そういうところが一部マニアに「トヨタのクルマは面白くない」といわせる要因のひとつだが、そういう目利きがトヨタの強みでもあるわけで、その良し悪しはここではいわない。
しかし、そういう地域最適が徹底しているトヨタゆえに、過酷な要求が突きつけられると、とんでもないクルマをつくる。このランドクルーザーなどは、そんなトヨタの良心的クルマづくりの筆頭格といえるだろう。
トヨタがはじめて悪路対応車をつくったのは、じつに1951年までさかのぼる。そして"ランドクルーザー(通称ランクル)"という名が与えられたのが1955年。いずれにしてもランクルは約60年の歴史を誇り、世界の奥地に分け入るほど「トヨタは知らないがランクルは知っている」とか「自分の生命をあずけられるのはランクルだけ」と信じる人が多くなる。
ランクルを名乗るトヨタ車は現在も数種類あるが、その頂点に位置するのが、マニア間で"200"というコードネームで呼ばれる今回のモデルだ。ランクルシリーズではもっとも大きく、かつもっとも豪華だが、悪路走破性や信頼性はランクル基準をなんら外れていない......ということは、世界でもっとも悪路に強く、そして壊れにくいということだ。トヨタ車は総じて信頼性が高いが、なかでもランクルの「壊れにくさ基準」は群を抜くという。一回や二回転げても、またそこいらをぶつけまくっても走行不能にはならない。なぜならランクルは「走行不能=生命の危機」という世界に生きる人のためのクルマだからだ。
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プロフィール
佐野弘宗 (さの・ひろむね)
1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/