【新車のツボ32】三菱デリカD:3/日産NV200バネット 試乗レポート
このクルマは三菱の"デリカD:3"という。早い話が日産がOEM供給(=相手先ブランド供給)する"三菱のバッジをつけた日産車"である。日産が製造販売する"NV200バネット"と実質はまったく同一品の双子車で、バッジやグリルデザイン、そして装備内容が少しちがう(日産でオプションあつかいのものが三菱では標準だったりする)だけだ。
このカタチでピンときた人も多いように、このクルマ本来の姿は、荷物をしこたま積んでコキ使われる仕事用のバンだ。今回取材したデリカD:3のGグレード(日産でいうとNV200バネット16X-3R)は、その商用バンをベースに、シート生地や内装、装備類をちょっと豪華にしてサードシートを追加したうえで、5ナンバーの乗用登録とした個人ユース向けの"ミニバン仕様"である。
乗用専用設計の本格ミニバンが出てきてからは少し影をひそめたが、商用ワンボックスやライトバンの機能性がツボにハマッて、この種のクルマを趣味グルマやファミリーカーに使うオジさんが昔からいた。最近だとトヨタ・ハイエースが、そうした好事家(こうずか)のツボを刺激するド定番にしてキング的なクルマといっていい。で、5ナンバー枠におさまるデリカD:3/NV200バネットは、いわば"小さなハイエース"というべき存在である。
このデリカD:3/NV200バネットを昔ながらのワンボックスと比較すると、ハナ先がつんと飛び出たカタチが特徴だ。「かぎられた全長で荷室長は1mmでも長く......」という商用車の原理原則からすると、その飛び出たハナの分だけ室内長は不利である。しかし、あえてこういうカタチである理由は、このクルマが日本国内だけでなく、欧州や中国、あるいはアメリカ......で売る正真正銘の世界戦略バンだからだ。フロントタイヤと運転席が近すぎる日本の伝統的なレイアウトだと、安全規制や高速性能、そして運転席環境などを世界レベルで満たせないらしい。
というわけで、勇猛果敢なプロの方々からは場合によって「オレの安全性よりお客様の荷物が大切だコラ!」といわれそうなデリカD:3/NV200バネットだが、少なくともこれを休日に嬉々として乗り回すような好事家には、このカタチはじつに都合がいい。
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プロフィール
佐野弘宗 (さの・ひろむね)
1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/