【新車のツボ34】
BMW5シリーズ 試乗レポート
個人ユーザーが「自分が運転するためのセダン」として買うもっとも高級なクラスというと、国産車だとトヨタ・クラウンあるいはクラウンマジェスタやレクサスGS、日産でいえばフーガ/シーマだろうか。輸入車でいうと、今回取り上げるBMWの5シリーズ、ベンツならEクラスがそれにあたる。
まあ、BMWにはさらに大きな7シリーズ(ベンツならSクラス、レクサスだとLS)もあるし、ベントレーやロールスロイスなどには、さらに大きくて高級な"やんごとなき人々"のためのセダンもなくはない。ただ、このクラスになると「オーナーは後席」という使われ方が念頭に置かれるようになるから、クルマづくりの根幹から"オーナードライバー"を意識しているのは、やはりクラウン/クラウンマジェスタや5シリーズのクラスということなるだろう。
このクラスは世界的に長らくベンツEクラスがベストセラーとして君臨している。地元ドイツでは5シリーズやアウディA6と抜きつ抜かれつになる場合もあるというが、少なくとも日本では今もってEクラスの人気がアタマひとつ抜けている。
しかし、あくまで私個人の"ツボ"でいえば、現在のこのクラスの王者は、文句なしにBMW5シリーズである。
BMWの代表的なモデルといえば3シリーズだ。5シリーズより1クラス小さいサイズで、小股の切れ上がったチャキチャキした走りが自慢のスポーツセダンであり、クラスでは不動のトップセラー。というわけで、BMWではどうしても3シリーズのイメージが強く、5シリーズのクラスでは認知度やブランドイメージでベンツの後塵を拝している感もあるが、5シリーズの歴史も前身2500/2800から数えれば45年弱......と十二分に長い。
現在の5シリーズの特徴はボディサイズがライバルよりちょっと大きいことである。その基本設計も同クラス他車とちがって、兄貴分の7シリーズを短くしたようなつくりなので、室内空間も広い。とくに運転席周辺の余裕やドラポジ調整範囲の広さは群をぬく。そして、ご想像のとおりウエイトも重い。たとえば今回の535iを日本製ライバルのレクサスGS350と比較すると、全長が8cm長く、重量は120kgも重い。
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著者プロフィール
佐野弘宗 (さの・ひろむね)
1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/