「いつでも会社を辞められるように」 高校野球部生が早くも「転職の準備」を学ぶ (3ページ目)
【若くして転職できる理由は「若いから」】
奥野「これからの日本の労働市場が売り手市場になることを考えると、ますます転職しやすい環境になるのは間違いないだろうね。おそらく、社会人になって10年目くらいまでは、転職することは比較的容易になると思うよ。
ただ、若いうちに転職できるのは、自分に知識やスキルがあるからなんて、ゆめゆめ思ってはいけない。それは勘違いで、会社が社会人になって10年目以内の人を積極的に中途採用するのは、その人が持っている知識・スキルに期待しているからではなく、若さゆえの将来性に期待しているからなんだよ。ビジネスという戦場においては、単なる知識やスキルというものはすぐに陳腐化してしまうので、そういった知識や資格そのものが長く通用する世界ではないと認識するべきだ。だからこそ知識そのものよりも、『学び続ける意欲』や好奇心が大事なんだ。そういう姿勢で仕事に取り組む人のみが『実績』を残すことができる。
そういう大事なことに気づかずに40代を超えると、転職は本当に大変で、なかなか転職できない。なぜなら若さというオプションを売ることで転職できた若い頃と違って、実績がない人を採用してくれる企業なんてないからだ。自社で実績を出せないビジネスパーソンはチャンスすらだんだん与えられなくなり、引き続き実績が出せない状態が続き、いつのまにか、その会社を辞めることが不可能になる。実績がないからだ。年齢を重ねると若さというオプションの価値が減耗していくので、本物の付加価値創出能力とそれを裏づける実績が必要なんだ。
ただ、仕事の実績って一朝一夕にできるものじゃないよね。勉強をしながら実務をこなし、仕事に対する知見、経験を高めていくなかで、徐々に形作られていくものなんだ。
その実績を手にするためには、自分に与えられた仕事に対して真剣に向かい合うことが大切だし、2、3年くらいは取り組まないと形にならない。それを、転職しやすいからといって、『この仕事は自分に合っていない』とか『もっと面白い仕事があるはずだ』という理由でジョブホップを繰り返していると、肝心の実績が身につかない。つまり40代になってから困ることになるんだ。
本音を言えば、35歳になるまでの間は、今、自分がいる組織の中で実績を作ることに専念するくらいのほうがいいかもしれないね」
鈴木「若いうちは転職せずに、35歳以降から考えたほうがいいということですか」
由紀「でも、35歳以降って結婚して子供がいたりもするから、私だったら転職で不安定な生活になるようなリスクを抱えるのは嫌かも」
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