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2バタの恐怖に陥った坂井聖人。
失意のどん底も東京五輪は諦めない (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Matsuo/AFLO SPORT

「いま泳ぎの修正をしていて、肩の痛みがなくなってきているので、腕がだいぶ前に出るようになり、大きなストロークができている。決勝はなるべく前半はラクに、ラストは粘って53秒近くでいけたらいいなって思っています」

 世界選手権の出場枠は残りひとつ。瀬戸はすでに出場を決めているため、予選2位の梅本雅之(レッドクイーン)や同5位の寺田拓未(日本体育大)らに勝ち、なおかつ1分5555のタイムをクリアしなければ「日本代表復帰」と「世界選手権出場」の目標には届かない。だが、坂井の表情からは自信を持ってレースに挑んでいることがうかがえた。

 決勝レースは序盤、狙ったとおりの展開になった。50mはミラーク、瀬戸に次いで3番手に位置し、2547で通過。100mは2番手に上がり、5481だった。そして150mは再び3番手となり、1分2505だった。

「レースに入る前に不安はなかったです。自信もありました。実際、前半の50mはすごくラクに入れて、残り50mになった時、意外とミラークが近かったので『いい感じで150mを折り返しているな。これなら153秒台を出せるな』って思っていました。でも、そこからでしたね......」

 ラスト50m、「いける!」と思って懸命に水をかいた。だが、かいている手の感触とは裏腹に、それほど進んでいるイメージを得られなかった。

「バテた......」

 坂井はそう感じたと言う。

 200mバタフライには"2バタの恐怖"というのがあるらしい。日本記録を持つ松田丈志も経験したことがあるそうだが、ラスト50mでバテると体が沈み、腕が上がらず、水をキャッチできなくなり、失速してしまう。

「そう思った瞬間、気持ちが折れてしまいました」

 ラスト50mは30秒以上かかり、坂井はすべてを失った。東京五輪まで描いていた青写真は消滅し、失意のどん底に突き落とされた。

 プールを上がった坂井はぼう然としていた。

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