号泣した日もあった青木玲緒樹。女子平泳ぎ日本代表のピンチを救った

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 二宮渉●写真 photo by Ninomiya Wataru

日本選手権の雪辱を果たし、世界選手権の切符を手に入れた青木玲緒樹日本選手権の雪辱を果たし、世界選手権の切符を手に入れた青木玲緒樹 女子平泳ぎは、かつて五輪や世界選手権で複数のメダルを獲得していた種目ながら、今年4月の日本選手権では50mと100m、200mの3種目ともに、7月の世界選手権派遣標準記録突破者がゼロだった。加えて、100mの派遣標準IIより0秒95遅いメドレーリレーの派遣標準(1分07秒43)さえ誰も突破できない惨憺たる結果に終わった。

※派遣標準記録Iは、国際大会8位相当内のタイムで、IIは国際大会16位相当内。そのタイムは日本独自の基準を設けている。

 世界選手権代表入りのラストチャンスとなった、5月30日からのジャパンオープンで、平泳ぎの出場選手がゼロになるという危機を救ったのは、2017年と18年の日本選手権で100mと200mの連続2冠を果たした青木玲緒樹(れおな/ミズノ)だった。

 昨年は、自己記録を100m=1分05秒90、200m=2分21秒85まで伸ばし、世界ランキングを4位と2位にしている。

 その実力をそのまま出せば、4月の日本選手権でも100m、200mで派遣標準I(100m=1分06秒19、200m=2分21秒83)の突破は確実と見られていた。しかし、100m決勝は前半を1位で折り返したものの、そこからなぜか失速して、1分07秒98で5位に沈んだ。そして、3日後の200mではその自信喪失が響いたのか、準決勝で2分28秒04の10位と決勝にすら進めずに終わった。

 しかし、今回のジャパンオープン初日。午前の100m予選では、前半を日本選手権決勝と同じ31秒40で折り返すと、後半も最後まで焦らない泳ぎで派遣標準II(1分06秒48)に迫る1分06秒77でゴールのトップ通過。

 青木は、「予選前のウォーミングアップは力んだ泳ぎになっていましたが、昨日のウォーミングアップはよかったので、その感じをレースで出せるように落ち着いて泳ぎました」と笑顔を見せた。

 そして決勝では、飛び込んでからの浮き上がりでトップに立つと、前半の50mを自己記録の時より0秒09遅いだけの31秒08で通過。ラストは「後半の25mを過ぎてからは急に泳ぎが詰まってしまった。記録を出さなきゃいけないというのが頭に入っていたのでちょっと焦った」と語ったが、1分06秒44で優勝して、世界選手権代表内定を決めた。

 このレースを青木はこう振り返る。

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