【大学駅伝】世代ナンバーワンランナー・増子陽太(学法石川高・福島)が早稲田大を選んだ理由 (2ページ目)
【「その時その時で正解を見つけていけたら」】
増子の話を聞いていて、その軸のブレのなさに驚かされる。決して他人の意見に耳を傾けないというわけではない。柔軟性を持ち合わせつつも、自ら考えて行動を取ることができるアスリートなのだ。
例えば、シューズの選択ひとつをとってもそう。都大路で増子がストリークフライ2というシューズを履いてレースに臨んでいたことは、SNS等でちょっとした話題になったが、その選択にはちゃんとした理由があった。
「(11月までトラックレースに出ていたため)スパイクから厚底シューズへの移行期間があまりなかったので、できるだけスパイクに近い感覚のシューズを履きたいなって思っていたんです。なおかつ、自分の感覚に合っていて、自分のしたい接地を助けてくれるシューズがこれでした」
チームメイトは皆、ほかのシューズを履いていたが、増子は自分の感覚を信じて勝負シューズを選んでいた。
この春から早稲田大学に進学するが、そこで競技に取り組む姿勢も自身の芯をぶらすつもりはない。
「高校生活を通して今まで自分が成し遂げてきたこと、積み重ねてきた記録や順位をあまり重く感じることなく、失敗してもいいから自分のしたいことをしようと思っています。自分の芯をぶらさずに走っていきたいです。今はロードでしか日本人は戦えないみたいな風潮があると思うんですけど、僕は、大学在学中はトラックに挑戦したいと思っています。5000mは12分台、10000mは26分台を確実に出すことを目標にしていきたい」
その志は高く、こうきっぱりと言いきる。
「いろんな人がいるので、たまに自分の芯を揺さぶってくる発言を聞くことも、もちろんあります。自分が陸上を続けていくなかで、これからそういう人も増えていくだろうと思います。でも、自分で考えて、自分で意識することのほうが大きい。そこは絶対にぶらしたくないです。
もしかしたら、自分が正解だと信じ込んだことが間違っているかもしれません。そういったところを、強い選手を見てアップデートしていきたいと思ったのが、早稲田大学に進学を決めた理由のひとつです。自分はもしかしたら間違えながら陸上をしているかもしれない。でも、それも面白いかなって思っています。正解に近づけるように陸上ができた時が自分の一番のピークだと考えているので、今はガムシャラに探さずに、その時その時で正解を見つけていけたらなって思っています」
増子はこんなことを口にしていたが、この発言にこそ、彼が世代トップに返り咲くことができた理由がある。増子は、間違えることを厭わない勇気を持ち合わせたアスリートなのだ。だからこそ、時には遠回りすることもあった。この先も間違った選択をすることもあるだろう。
増子はそれを自らの伸びしろと捉えている。この先も、まだまだ強くなれると信じて――。
著者プロフィール
和田悟志 (わだ・さとし)
1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。
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