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高橋尚子のシドニー五輪金メダル「すごく楽しかった42kmでした」の裏にあった「怖くて、長かった最後の200m」 (4ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

【金メダルの次は世界記録を出したい】

 高橋が、小出監督の言っていたことを本当に実感、理解できたのは、引退してからだった。

「今の私の(スポーツキャスターや普及活動での)立場があるのは、その時、そういう行動を取っていたからです。小出監督はランナー高橋尚子だけではなく、引退後の長い人生を考えてくださって、そういう助言をしてくれたんだと、今、しみじみ実感しています」

 4年後のアテネ五輪は、すぐには考えられなかった。五輪で金メダルを獲得し、小出監督に恩返しをするという大きな目標を達成できたからだ。

 ただ、高橋にはもうひとつ大きな目標があった。

「マラソンで世界記録を出したいと、ずっと思っていたんです」

 金メダリストは、五輪2連覇ではなく、世界記録に挑戦するために動き出した。

(つづく。文中敬称略)

高橋尚子(たかはし・なおこ)/1972年生まれ、岐阜市出身。県岐阜商業高校から大阪学院大学に進み、卒業後に小出義雄監督率いるリクルートに入社。1997年に積水化学へ移り、二度目のマラソンとなる1998年名古屋国際女子マラソンで日本記録を更新して初優勝。同年のアジア大会ではスタート直後から独走し、自身の持つ日本記録を4分以上も更新。2000年シドニー五輪で金メダルを獲得し、国民栄誉賞を受賞。2001年ベルリンマラソンで2時間1946秒の世界記録(当時)を樹立。2008年に引退。現在はスポーツキャスター、市民マラソンのゲストなどの普及活動に精力的に取り組んでいる。

著者プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。近著に「箱根5区」(徳間書店)。

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