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2011年以来の箱根駅伝制覇へ 早大・花田勝彦駅伝監督が語る「クラファン」実施に踏みきった理由 (2ページ目)

  • 和田悟志●取材・文・写真 text & photo by Wada Satoshi

【クラファンの目的は駅伝に特化した"個"の強化】

自身の現役時代の経験から「個の強化」にアプローチした花田駅伝監督 photo by Wada Satoshi自身の現役時代の経験から「個の強化」にアプローチした花田駅伝監督 photo by Wada Satoshi そんな自身の体験があって、2022年6月に駅伝監督に就任した花田は、箱根駅伝で再び頂点に立つには、突出した"個"の育成が必要と考えた。

 しかし、そのために海外遠征や国内外で強化合宿を行なうには金銭的な面が壁となった。もちろん大学から部に割り当てられる予算はあるが、競走部には一般種目を含めると男女合わせて120人を超える部員がおり、そこから駅伝に特化した"個"を強化するための予算を確保することは難しかった。

「私が学生だった当時は、企業からバックアップいただいたりしていましたけど、今はそれがないので、どこかから支援をいただくしかなかった」

 そこで花田監督が目をつけたのがクラウドファンディングという活動資金を募る手段だった。

「慶應がチームの強化でクラウドファンディングをやっていたので、早慶のつながりで話を聞いたり、筑波もずっとやっていたので当時の監督だった弘山さん(勉、現・スターツ監督)に話を聞いたりしました」

 クラウドファンディングサービスを提供するREADYFOR株式会社と早稲田大学が包括提携したこともあり、花田が発起人となり、その第一号として2023年2月に第一弾のクラウドファンディングが実現した。

 寄付金による税控除を受けられるようにしたことも、ハードルを低くした要因だっただろう。

 こうして、先に書いた通り、花田の想像を上回る金額が集まった。

 その資金をもとに、その年の秋には山口智規(4月から4年)、伊藤大志(同NTT西日本)、石塚陽士(同ロジスティード)の3人がチェコ・プラハに遠征。また、佐藤航希(現・旭化成)がコペンハーゲンに遠征し(延岡西日本マラソンの副賞の海外遠征費用の補充に)、伊藤はニューヨークシティーハーフマラソンに出場した(山口智規は上尾シティハーフ2位の副賞で同大会に参加)。

 海外遠征を経験して、ひと皮むけた活躍を見せたのが山口だった。2023年度は上尾シティハーフマラソンで早大記録(当時)を打ち立てると、箱根駅伝でも2区の早大記録を樹立し、エースとして活躍。さらに、日本選手権クロスカントリーではシニア10kmで優勝し、世界クロスカントリー選手権の日本代表に選出されるなど、一躍日本のトップランナーへと駆け上がっていった。

つづく

著者プロフィール

  • 和田悟志

    和田悟志 (わだ・さとし)

    1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。

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