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ウルトラマラソンの世界王者・山口純平に聞く 100kmを6時間余りで走るということ「残り30kmからが本当に長い」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

【世界で最初に6時間を切りたい】

次なる目標は世界記録(6時間5分41秒)の更新だ。写真/本人提供次なる目標は世界記録(6時間5分41秒)の更新だ。写真/本人提供 世界選手権で目標を達成し、山口の視線はすでに次に向いている。

「世界一になれたので、次は記録への挑戦が大きな目標になります。まずは、6時間5分41秒の世界記録を破り、その次は6時間切りです。フルマラソンで言う2時間切りみたいな感じですかね。自分が6時間を世界で最初に切って、歴史に名前を残したいです。ただ、今年は世界選手権がないのでマラソンの自己ベスト(2時間1631秒)を更新しておきたいですね。3月の東京マラソンで2時間15分を切りたいと思っています」

 山口はレースごとに髪の色を変えており、以前は1色だったが、最近は数色入れるようにしている。目立つゆえに応援してもらう際も有利に働きそうだ。

 世界選手権で金メダルを獲得したが、一方でメディアの扱いは少なかった。マラソンのレースや箱根駅伝ほどの注目度もない。だからこそ、山口はウルトラマラソンの面白さやすごさを自ら伝えていきたいという。

「僕は学生時代に箱根駅伝を走れませんでしたが、今思うことは箱根だけがすべてじゃないということです。僕はたまたま100kmに出会いましたが、走るって、いろんな種目がありますし、いろんな可能性があるというのを社会人になって知りました。今、大学や実業団で走ることに苦しんでいる選手もいると思います。でも、自分の走りを見て、いろんな可能性があることを理解してもらい、前向きに進んでもらえたらうれしいです」

 箱根は経験できなかったが、走ることをやめず、今や世界王者になった。ゆくゆくはウルトラマラソンよりもさらに過酷な24時間マラソンにも挑戦したいと考えている。そんな山口の生き方には、ランナーというよりも冒険者の薫香を感じずにいられない。

(了)

■Profile

山口純平/やまぐちじゅんぺい
1997年2月5日生まれ、東京都出身。中学時代にサッカー部とかけもちで陸上競技の大会に出場し始める。山梨学院大付属高校(現・山梨学院高校)3年時には主将として全国高校駅伝出場(4区34位)。国士舘大学に進学し、箱根駅伝を目指すも4年間出場ならず。卒業後はアパレル会社に勤務するかたわら、市民ランナーとして活躍。フルマラソンのベストは2時間1631秒(2022年東京マラソン)。徐々に超長距離の大会に挑戦するようになり、2023年サロマ湖100kmマラソンで6時間6分08秒の日本記録を樹立。そして昨年12月、自身二度目の出場となる100km世界選手権(インド)で初優勝した(6時間1217秒)。

著者プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。近著に「箱根5区」(徳間書店)。

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