箱根駅伝2025 「國學院大が歴史を変えるときは、いつも何かが起きる」 主将OBの土方英和が期待する初優勝のカタチとは----
第96回箱根駅伝の2区を走り出す土方(右)。その時の「歴史を変える挑戦」のスローガンは今季、受け継がれた photo by YUTAKA/アフロスポーツ
後編:OB土方英和(旭化成)が語る國學院大の強さ
第101回箱根駅伝で初の総合優勝を目指す國學院大。今季はここまで2冠を達成し、満を持して最大の挑戦に挑もうとしている。
そんな後輩たちの姿は、5シーズン前の主将・土方英和(現・旭化成)の目に、どのように映っているのだろうか。
自身が卒業してからのチームの変化、そして今回大会を俯瞰した勢力図のなかで、後輩たちに期待する理想の勝ちパターンとは−−。
【受け継がれたスローガン】
多くのメディアで「歴史を変える挑戦~EP.3~」のフレーズを目にすると、思いを巡らせる。國學院大OBの土方英和は、しみじみと話す。
「5年前に僕たちが立てたスローガンと、そのときの走りを見て入学してきた選手たちが、もう一度、同じ標語を掲げ、國學院の歴史を変えようとしているんですから、率直にうれしいです」
いつの時代も目標は、箱根駅伝である。「歴史を変える挑戦」のEP(エピソード)1は寺田夏生(現・皇學館大監督)らが2011年に果たした初のシード権獲得、エピソード2は土方たちが2020年に成し遂げた初の総合3位、そして今年度、目指すのは初の総合優勝。出雲駅伝、全日本大学駅伝を制しても、慢心は見えない。正月の舞台に懸ける思いが、ひしひしと伝わってくるという。
「一戦必勝で戦う気持ちを感じ取れますね。駅伝シーズンが始まる前から前田監督、選手たちもずっと『箱根を取りたい』と言っていましたから」
かつては新興勢力と呼ばれ、ダークホースの域を出ることはなかった。当時、主将だった土方は隔世の感を覚えていた。
「僕たちの頃は往路優勝、総合3位を目指していたこともあり、往路で貯金をつくり、復路はそのリードを守りきろうという感じでした。1日目の5人のメンバーでなんとかしようという雰囲気だったんです。正直、往路組と復路組の力の差はあったので、選手たちのなかでも、意識は違ったと思います。
今年度は、全員が総合優勝だけを目指すと言える戦力がそろっています。高校時代にエースだった選手たちに加え、大学でぐんと伸びた辻原輝のような主力もいます。國學院ならではの育成力も健在で、往路、復路ともに充実しているなと。メディアを通し、前田監督の口から『復路勝負』と聞いても、すぐにイメージが湧きましたから。往路で耐えて、復路で仕掛けていく展開もあるのかなって」
ただ、ライバルとなる大学のメンバーも、強力なラインナップを誇る。戦力を温存して往路をしのぐのは、至難の業。駒澤大には全日本大学駅伝の7区でエースの平林清澄(4年)を上回るタイムで走った篠原倖太朗(4年)をはじめ、10000mで日本人学生歴代2位の記録を持つ佐藤圭汰(3年)も準備している。そして土方がより警戒を強めていたのは、青山学院大だ。
「前回大会でも3区で先頭に立ち、そのまま逃げきっています。そういう勝ち方を知っていますからね。鶴川正也(4年)、黒田朝日(3年)、太田蒼生(4年)、若林宏樹(4年)が往路にエントリーされれば、かなり強力。國學院が復路に力を割くにしても、往路を終えた時点であまり差を広げられたくないですよね」
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著者プロフィール
杉園昌之 (すぎぞの・まさゆき)
1977年生まれ。サッカー専門誌の編集記者を経て、通信社の運動記者としてサッカー、陸上競技、ボクシング、野球、ラグビーなど多くの競技を取材した。現在はジャンルを問わずにフリーランスで活動。