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箱根駅伝2025 「國學院大が歴史を変えるときは、いつも何かが起きる」 主将OBの土方英和が期待する初優勝のカタチとは---- (2ページ目)

  • 杉園昌之●取材・文 text by Sugizono Masayuki

【平林に2区区間賞を期待する意味】

 土方自身もよく知っている。大学4年時に2区で出走した第96回大会(2020年)の箱根駅伝では、4区から青学大の独走を許してしまった。"復路勝負"に持ち込むためには、往路での踏ん張りは必要不可欠。3年連続でエース区間での起用が予想される主将の平林には、大きな期待を寄せている。

「1時間5分台で走り、区間賞を取ってもらいたいです。前回大会(区間3位/1時間6分26秒)よりも確実に力をついていると思います。今年2月の大阪マラソンでも、後半のきつい場面でペースアップし、自分からどんどん仕掛けていきましたから。

 あの走りは箱根の2区にもきっと生きてきます。20km以降の戸塚の坂って、マラソンの後半を走っている感覚にすごく似ているんですよ。お尻の筋肉が使えなくなり、力が入らなくなりますし、ラスト1kmは本当にきつい。どんな駅伝よりも一番しんどい。たぶん平林も2区の経験がマラソンに生きたと思いますよ。次はマラソンの経験が、2区に生きる可能性もあるのかなと」

 過去に3年生から2連続で2区を走り、現在はマラソンに取り組むランナーならではの考察だろう。花の2区で國學院のエースが強さを証明することの意義も大きいという。時代をさかのぼっても、箱根路で赤紫の襷をかけて区間賞を獲得したのはふたりのみ。79回大会(2003年)の3区・山岡雅義、95回大会(2019年)の5区・浦野雄平(現富士通)だけなのだ。

「2区で区間賞を取ってこそ、大学駅伝界のエースだと思います。平林には箔(はく)をつけてもらいたいです」

 これもまた、歴史を変える挑戦のひとつなのかもしれないが、勝負は2区だけで決まらない。10区間を通して見れば、総合優勝のカギとなりそうなのは山区間。青学大には若林、駒大には山川拓馬(3年)という経験値を持った5区の切り札がいる。

「國學院は山の5区、6区で耐えられるかどうか。できるだけタイム差を離されないようにしたいです。この区間で勝つようなことがあれば、もう絶対に優勝できると思っています」

 土方はふと口元を緩めると、理想の展開を頭に思い浮かべた。

 青学大のように往路の途中から独走し、復路は余裕を持って楽しいピクニックラン−−。

「OBとしてはそれくらい安心して見たいですが、現実的に考えれば、そんな駅伝にはならないと思います。10区でひっくり返して、総合3位になった僕たちと重ねるわけではないですが、101回大会でもドラマチックに初の総合優勝をつかみ取ってほしい。

 國學院が歴史を変えるときって、いつも何かが起きるんですよ。出雲駅伝の初優勝も最終区間でトップに立ちましたし、初めてシード権を獲得したときも寺田さんが10区の最後でコースを間違えて、ぎりぎりで11位から10位に押し上げています。今回、期待するのは復路での逆転ですね」

 1月3日は大手町でハラハラドキドキしながら、先頭で返ってくるアンカーを待つつもりだ。箱根史に"逆転の國學院"として、語り継がれることを想像して--。

photo by AFLOphoto by AFLO

●Profile
土方英和(ひじかた・ひでかず)/1997年6月27日生まれ、千葉県出身。國學院大時代は1年時から4年連続に箱根駅伝に出走。3・4年時はチームの主将を務め、箱根では2年連続2区に出走を果たし(区間7位、8位)、4年時にはチーム史上最高の総合3位に貢献した。また、同大史上初の三大駅伝優勝となった4年時の出雲駅伝ではアンカーを務め、3人抜きを果たしてゴールテープを切っている。卒業後は実業団選手としてマラソン、駅伝で活躍し、2022年9月から旭化成で競技に打ち込み、現在は副主将も務めている。マラソンの自己ベストは2時間06分26秒(2021年2月)。

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