箱根駅伝へ青学大の揺るぎない決意が見えた陸上日本選手権5000m 鶴川正也の日本人学生最高記録と黒田朝日の攻め (2ページ目)

  • 和田悟志●取材・文・写真 text & photo by Wada Satoshi

【スピード練習なしの距離走中心で5000mに出場】

 走り終えたあとは喘息の発作が出て、しばらく立ち上がれなかった。

 実は、レース2週間前にアキレス腱を痛めてしまい、この2週間は負荷の高い練習をこなせなかったという。

「トレーニングがあまりできていなくて、(5日前の)日曜日に刺激を入れた(レースに向けて体に負荷をかける練習)だけだったんです。でも、試合になったら自分を限界まで追い込めるタイプなので、それでいけるかなと思ったんですけど......」

 目論見どおりにはいかなかったが、はたから見れば十分健闘に映っただろう。だが、本気で優勝を狙っていただけに、鶴川は「悔しいです」という言葉を連呼していた。

 一方で、国内最高峰の舞台で得た手応えも大きかった。

「発作が出るぐらい追い込めたので、また一歩強くなれた。次は勝てると思います」

 鶴川がこう言いきるのには、確かな理由があった。それは、現状での青学大の練習にある。

「青学では今の時期、スピード練習を全くやっていません。毎週21kmとかの距離走があります。先週の土曜日も暑いなかクロカンコースを使って距離走をしました。こんな練習は(5000mに出場した)ほかの選手はやっていないと思います。

 トラック練習が足りていない分、ラストのキレがなくて負けてしまいましたが、粘れたのは、絶対にそのスタミナのおかげだと思うんです」

 まだまだトラックシーズン真っ只中にもかかわらず、青学大はすでに駅伝を見据えた練習に入っていた。

 もちろん4位という順位の価値に変わりはないが、5000mに特化した練習を積んで日本選手権に臨んでいたら、どんな結果になっていたのだろうと想像してしまう。

「もっと練習して、実業団に行って5000mの練習をやったら、絶対に行けると思う。また次、頑張ります」

 こう決意を表明する鶴川の未来に、いやが上にも期待が高まった。

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