青学大が箱根連覇へ視界良好!「駅伝で勝つチーム」が個人でも好成績連発で躍動 (4ページ目)

  • 和田悟志●取材・文・写真 text & photo by Wada Satoshi

【ついに頂点に立ったキーマン】

 そして、今季の青学大の最大のキーマンとなりそうなのが鶴川だ。

 高校時代には全国高校駅伝の1区で区間賞を獲得している実力者。いわば、この世代の"ドラ1"選手だ。ところが、大学に入学してからは関東インカレでは2年時、3年時と2年連続で日本人トップになる活躍を見せながらも、駅伝ではなかなか出番がなかった。

 昨年度の出雲駅伝でようやくアンカーを任されたが、区間7位と力を発揮できなかった。さらに、その後に大腿骨を疲労骨折し、箱根駅伝は走ることができなかった。

「自分が走って勝たせたいという思いがあって、箱根駅伝で(チームが)勝ったのはうれしかったんですけど、9.9割は悔しかった」と、チームの勝利も素直に喜ぶことができなかったという。

 それだけにラストイヤーにかける思いは大きい。その思いの強さは関東インカレでも見せた。過去2大会は日本人トップでも、「一瞬のキレ、ラスト100mの負けない走りが自分の武器なのに、これまでその力を発揮できず、関東インカレでは悔しい結果で終わっていました」と言うように、3位という結果には満足していなかった。

 今回もダンカン・マイナ(専修大1年)、ブライアン・キプトゥー・ブシューアキットゥ(麗澤大1年)といった留学生とのラストスパート対決になった。

「風が強いなと思ったので、ラスト1周(400m)で出たら最後は(脚を)動かせないと感じたので、ラスト200m以降、自分のスピードで戦おうと思いました」

 こう冷静に判断した鶴川は、先に仕掛けたマイナをラスト100mでかわし、先頭でフィニッシュした。

 悲願の優勝にも「喜ぶのは今日だけ」と鶴川は言う。

「青学大に入ったのは、箱根駅伝で活躍したい、優勝に貢献したいという気持ちがあったから。ケガにも気をつけながら、明日からは来年の1月2日、3日の箱根駅伝に向けてトレーニングしていきたい」

 ラストイヤーに箱根駅伝を走ってチームの優勝に貢献するために、自らの手綱を締め直していた。

 1週間前の日本選手権10000mや日本グランプリシリーズなどに出場した強豪選手の一部が関東インカレを回避していたが、青学大は主力選手がきっちりと結果を残し、いい流れで新シーズンに突入している。

 さらに、注目のルーキー・折田ら新戦力も強力で、ますます盤石な態勢を築くことができそうだ。

 今シーズンも始まったばかり。もちろん現段階で今季の駅伝シーズンを占うのは早計だ。また、ライバル校もこのまま黙ってはいないはずだ。それでも、この関東インカレでは、まずは青学大が一歩抜きん出た印象を残した。

プロフィール

  • 和田悟志

    和田悟志 (わだ・さとし)

    1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。

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