「5分50秒に届かない練習だった...」東京マラソンでパリ行きを逃した西山雄介ら有力選手3人 彼らの走りに何が足りなかったのか (2ページ目)
西山は、これまで1回目より2回目、2回目より3回目とそれぞれのレースを反省して、課題に取り組むことでレベルアップしてきた。そうして迎えた今回の東京マラソンは、過去のレースをアップデートして、今までのマラソンで一番いい状態だったという。それでも結果が出ない時があるのがマラソンだ。
ただ、レ-ス後、西山の言葉で気になったことがあった。
昨年のMGCについて西山は「MGCは振り返れなかった。レースを振り返るとマイナスになってしまう」と言った。悪夢のようなMGCは、振り返るにはつらすぎたのだと思うが、そこから目を背けず、真正面から向き合い、そのレースから何かしらの教訓を得ていたらどうなっていただろうか。もしかすると35キロ以降、違った展開が見られたかもしれない。ゴール後、西山はパリ五輪に届かなかった現実を知り、顔を覆って泣き崩れた。
後続の選手がゾクゾクとゴールし、ミックスゾーンを選手が通り抜けていく。取材対応をするためにミックスゾーンに入る手前の椅子に腰かけた西山は放心状態で、まるで『あしたのジョー』の最後のジョーの姿のようだった。頬には涙が伝った白い線が残っていた。
其田健也(JR東日本)は、33キロ付近で浦野と西山が前に行く中、少し遅れていた。だが、そこから歯を食いしばって前に出た。36キロ過ぎに日本人トップの西山に15秒差まで詰め寄ったが、そこからペースを上げられなかった。最終的に2時間06分54秒で総合11位、日本人2位でレースを終えた。
其田は、昨年のMGCでは15キロ付近で、右ふくはらぎを痛め、途中棄権となり、悔しい思いをした。そのことを忘れずに「3月3日に合わせるために、苦しい練習をこなしてきた」という。「5分50秒」という壁を越えるためには、キロ2分58秒のペースが必要になる。昨年からそのペースでの練習を進めていたので今回、練習通りにいければ、あとはコンディション次第でどうにか越えられると思っていた。
「コンディションは良かった、あとは自分次第だった」
しかし、5分50秒は、それほど容易に出せるタイムではなかった。
「前半、もっとハイペースでいけば、もっとラクな展開になったのかなと思いました。集団が大きかったですし、ペースの上げ下げもあったので厳しいレースでしたけど、条件はみんな同じ。前半、余裕があった分、後半勝負を考えていましたが、やっぱり5分50秒は、そんなに甘いタイムではなかったです。今日の結果が今の力の限界だったのかなと思います」
其田は、レースに対する言い訳を一切しなかったが、その表情は悔しさでいっぱいだった。他の選手と同じように、MGCからここまで苦しい練習に耐え、相当に大変な思いをしてきたはずだ。其田にとって、それはどんな時間だったのか。改めて聞くと、目から涙があふれた。
「パリだけを目指していたので......悔しさはありますけど、やれることはやってきたので、悔いはないです。ここまで苦しんだ分、次に活かさないといけないと思っています」
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