箱根駅伝で國學院大5位の原動力は2年生 ゴール後に涙も頂点を目指して前を向く (3ページ目)
2年生のなかで圧巻の走りを見せたのは、青木だった。
1区の伊地知賢造が17位と出遅れたが、2区で8人抜きを見せた平林から襷を受けて、3区の湘南ロードを駆けた。
「とにかく前しか見ていなかったです。伊地知さんに全部背負わせて卒業させるわけにはいかないので、自分たちで順位を上げてうれし涙で卒業させてあげたいと思ったので。自分が少なくともあと30秒詰めたらもう少し上を狙えたと思うので、それができなかったのが悔しいです」
レース後、前田監督からは「よくやった」と労いの言葉をかけられた。実は、青木も箱根の3週間前にインフルエンザに罹患し、本番前にようやく感覚が戻って来た。その状態で、青学大、駒澤大、城西大に続いて4番目のタイム(61分56秒)で走り切り、順位を3つ上げて6位で4区の辻原輝(1年)に渡すことができたので、役割は十分に果たしたといえよう。
他の2年生の走りも青木には、刺激になった。
「鎌田はすばらしい走りでした。自分は藤沢で応援していたんですけど、その時点では創価大より遅れている感じだったんです。でも、最後は抜いて順位を上げたので強いなと思いましたし、豪起も10区で最後まで諦めずに走ってくれました。上原は悔しい結果に終わってしまって......。ゴール後、『一緒に強くなろうな』と泣いてしまったんですけど、絶対に強くなりたいと言っていたので、来年は必ずリベンジしてくれると思います」
レース後、青木はすでに次のシーズンに視線を向けていた。
「次は平林さんがキャプテンになりますし、強い4年生が中心になって、出雲、全日本、箱根と3冠を取れる勝負のシーズンだと思っています。その中で、自分たちの世代は主力となって、チームを引っ張っていかないといけない。今回、青学大や駒澤大が優勝を争っているのを見ていて、自分たちはそこにいないといけないと思いました。来シーズンは、そういう場で勝負をして、勝ちたいなと思っています」
この日、走れなかった嘉数を含め、2年生はまずまずの結果を残した。ただ、彼ら以上に4名の1年生がしっかり走っている。うかうかしていると1年生に主役の座を取って代わられる可能性が出てくる。
来季は、チームにとっても2年生にとっても勝負のシーズンになるだろう。
著者プロフィール
佐藤 俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。
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