箱根駅伝のダークホース?! 神奈川大が「徹底的なオーダーメニュー」で躍進 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 日刊スポーツ/アフロ

4年生山﨑諒介の好走も

 だが、大後監督は、冷静だった。

「うちは16位(出場権審査)で力のないチームですが、よそがなかなか揃っていないなか、それなりに布陣を整えられた。それでなんとかチャンスはあるかなと思っていたのですが、トップ通過はおまけだと思います」

 大後監督が冷静なのは、各校ともにエースクラスの選手が故障などで出走していないからだ。2位の東洋大は、主将の前田義弘(4年)、佐藤真優(3年)、石田洸介(2年)らの出走がなく、東海大もエースの石原翔太郎(3年)、松崎咲人(4年)、溝口仁(3年)らの姿はなかった。主力がそろえば、戦力は相手のほうが上だという思いが大後監督にはあるのだ。

 ただ、それでもトップ通過という結果がもたらすインパクトは大きい。

 今回の予選会で、神奈川大は最終的には7人が10位以内という非常に安定した走りを見せた。他大学からすると好走したルーキーの宮本を始め、島崎、小林、宇津野らが高い次元で安定しており、さらに出走していない小林政澄(3年)、佐々木亮輔(3年)、大泉真尋(3年)らがいる。夏合宿を越えて、さらによい選手が出てくる可能性があるので、箱根駅伝の予選会に出場するチームは、相当に警戒感を強めたはずだ。

 神奈川大からすると収穫しかない。

 トップ通過や宮本の快走もそうだが、度肝を抜いたのは4組目、山﨑の走りだ。1万mの持ちタイムは32分34秒46だったが、「3組目までいい順位できていたので、プレッシャーはあったんですけど、自分もいけると強い気持ちで臨みました」と語るように、留学生が走るなか、攻めの走りで28分58秒74のタイムを出し、その組で日本人5位、全体9位という結果を残した。大後監督は「未知の能力を持っている」とレース後、笑顔で語ったが、新たに戦える選手が出てきたことは非常に大きい。

 また、今回のトップ通過は、結果が示すように神奈川大の走力そのものがレベルアップしてきたことが挙げられる。このレベルアップについて、巻田は「意識が変わったことが大きい」と言う。

「前回の箱根駅伝は、シード権まであと少し(1分14秒差)だったので、今年こそは全員でシード権を獲得しようと強い気持ちで質の高い練習ができているのが大きいと思います」

 練習メニューの質が高くなり、全体の練習もいい感じでできているとのことだが、それはどこの大学も追及しているところではある。

 神奈川大は、これまでと異なる新しい取り組みをしているのだろうか。

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