福士加代子が振り返る、笑顔で走り続けた23年の陸上人生「世界レベルで戦えているのが面白くて」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT

福士加代子インタビュー(前編)

 2022年1月30日、福士加代子さん(ワコール)は大阪ハーフマラソンで現役を引退。高校から走り始め、オリンピック出場は4回。5回出場した世界選手権ではマラソンで銅メダルを獲得した。

どんな時でも笑顔を絶やさず、明るく女子長距離界を牽引してきた福士。引退レースから約半年が経ち、改めて現役生活を振り返るとともに、これからの女子中長距離に期待すること、自身の今後について聞いた。

2022年1月30日、引退レースを終えて笑顔を見せた福士加代子さん2022年1月30日、引退レースを終えて笑顔を見せた福士加代子さん「15kmまでは調子がよかったのですが、最後は必死でした。フラフラなってきて、初マラソンの時のように転ぶんじゃないかと思って......。久しぶりに脚にくるくらいに疲れて、長居の公園に入ってからは、途中で『頑張ってください』と声をかけてくれた人たちすべてに抜かれたみたいな感じで(笑)。『アレッ、私の引退レースは、もっと颯爽と走る予定だったけどな』とも思ったけど、『まあいいか』って。見ている人たちには『また転ぶんじゃないかな』と思われていたけど、最後のほうは『らしいね』と言ってもらえたから、よかったです」

――では、陸上人生を振り返っていきましょう。競技は、五所川原工業高校時代にスタート。高校3年生ではインターハイにも出ましたが、この頃は何がモチベーションでしたか?

「高校時代は恩師のお陰で、高校生の全国合宿に参加できて、藤永佳子(諫早高→筑波大→資生堂)や大平美樹(松山商高→三井住友海上)など、当時の高校のトップレベルの選手に会えました。練習ではみんなすごく強いけど、練習以外でしゃべったら面白くて。『また会いたいね』と言ったら『次はインターハイでね』と言うから、『これはやらないといけない』と思って、そのために頑張りました(笑)。本番はギリギリの予選通過だったけど、みんなと会うのが目的だったので大満足でした。

 記録はまったく持っていないけど、合宿の練習ではとにかく強い選手についていったので、『面白いやつがいる』とワコールのスカウトマンの目にとまったのかもしれません」

――そのワコール入社は永山忠幸監督から直接スカウトだったと言われていましたが、実際は?

「永山監督ではなくスカウトの方に誘ってもらったんです。最近本(『福士加代子』/いろは出版)を出したんですが、その取材で永山監督が『僕は教える自信がなかったし、みんなが言うようないい選手なら、小出義雄さんのところにいけばいいと思っていた』と答えていて、『そうだったんだ』とそこで初めて知りました(笑)。監督も指導を始めたばかりの時期だったので、お互いに探りながら、『一緒に成長しよう』という感じでした。その思いがあったからこそ、ここまでこられたと思います。本当にいい出会いでした」

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