2022.06.26

箱根駅伝のダークホース?! 神奈川大が「徹底的なオーダーメニュー」で躍進

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 日刊スポーツ/アフロ

全日本大学駅伝関東地区予選会で好走した神奈川大のルーキー、宮本陽叶全日本大学駅伝関東地区予選会で好走した神奈川大のルーキー、宮本陽叶 この記事に関連する写真を見る

1年生宮本陽叶が勢いをつけた

 6月19日に行なわれた全日本大学駅伝関東地区予選会で、並み居る強豪校を抑え、トップ通過を果たしたのは、神奈川大学だった。予選会は、1校2名ずつ、4組で1万mのレースを行ない、8名の合計タイムで上位7校に入れば出場権を獲得できることになっている。レース前、出場校審査の合計タイムで神奈川大は16位。予想では、トップ通過はエントリ―タイム1位の創価大、2位の東海大、4位の東洋大らの間で争われるだろうという声が多かった。だが、神奈川大はその予想を覆してトップ通過を果たし、4年ぶりの本大会出場を決めた。

 予選会は、駅伝と同じで流れが重要になる。

 1組目が好走すれば、勢いをつけて見えない襷を2組目につなぐことができる。神奈川大で、その役割を果たしたのが、有村祐亮(4年)とルーキーの宮本陽叶(みやもと・はると)だ。

 2組目に出走して5位になった島﨑昇汰(4年)は「宮本がいい走りをしてくれたので、とても力になり、勢いをつけてくれました」と語り、1組2位になった宮本の走りがその後の展開に大きな影響を与えたことを指摘した。実際、宮本らの走りが刺激となり、島崎と同じ2組の尾方馨斗(3年)は9位、3組の小林篤貴(3年)は2位、宇津野篤(3年)は5位で、6名全員が10位以内に入り、この時点でトップに立った。最終組は山﨑諒介(4年)が9位、巻田理空(3年)は24位とまずまずの走りを見せて本大会出場の椅子を勝ちとった。「ふだんの練習の達成率を見ると宮本が一番」という理由で、大後栄治監督は宮本を1組目に置いたが、その狙いがずばりとハマった。

 スタジアムを沸かせたルーキーの走りは、圧巻だった。

 宮本は、レースの3日前から腹痛になり、緊張もあって調子が悪かったというが、本番では後半になっても頭がまったくブレず、初の1万mのレースとは思えない力強い走りを見せた。

「レースは9000mまでは前の人についていってラスト2周でスプリントをかけて勝負しようと思っていました。自分はラスト400mのスプリントになると勝てないのですが、足は残っていたので自分の判断で前に出ました。監督にはふたりで14位以内に入ればいいと言われたので、(2位になり)ちょっとホッとしました」

 宮本は、初々しい笑顔を見せたが、走力の高さは、高校時代から有名だった。大型ルーキーの佐藤圭汰(駒澤大・1年)と同じ洛南高校出身で、昨年の都大路では4区区間賞を獲った。ポテンシャルの高さは、大後監督も認めるところだ。

「昨年の高校駅伝で区間賞を獲り、実績を背負ってきている力のある選手。(OBでマラソン日本記録保持者の)鈴木健吾に憧れてうちを選んでくれたと思うので、第2の鈴木健吾になってくれればと思います」

 練習ではすでにAチームに入り、先輩たちの前を走ることも多い。

 尾方は「宮本は上級生がキツそうな練習でもスイスイ走って、全学年のスピード練習をしてもトップを獲るので、本当にすごい」とその走力に舌を巻く。小林も「宮本は練習では1回も離されたことがないですね。昨年はAチームに1年生がひとりもいなかったんですが、今年は宮本を始め2、3人いるので、自分たちも頑張らないといけないと、気合が入ります」と語り、宮本を筆頭に1年生がいい刺激になっていると言う。

 宮本は今回、初の1万mで29分45秒40を出したが、「練習では30分をきれるぐらいでやってきましたが正直、思ったよりも走れました。今年中に28分台を出したいですね」と冷静に語り、本大会では「1年生ですけどレギュラーメンバーを狙えるように頑張っていきたい」と3大駅伝の出走に意欲を見せた。

 俄然、注目を集めたルーキーだが、大後監督は丁寧に育成していくという。

「まだ1年生。無理をさせたくないので、1年生のメニューでしっかりと体を作りながら26歳か27歳にマラソンでしっかり走れるようにしていきたいと思っています」

 宮本の走りから会心のレースを見せた選手たちは、レース後、トップ通過のアナウンスに弾けた笑顔を見せた。