東大理三に現役合格のちインカレ優勝の内山咲良。「誰もやったことがないことをしてみせたい」と励んだ文武両道 (2ページ目)

  • 宮部保範●取材・文 text by Miyabe Yasunori
  • photo by Kyodo News

ーー自己評価は厳しいようですが、東大医学部に通いながらインカレで勝つのは大変なことだと思います。

内山 大学で陸上を生活の中心にするかどうかは、けっこう迷いがありました。大学入学時に、全学の陸上部(運動会陸上運動部)と医学部の陸上部(鉄門陸上部)の両方に所属してしまった。それがどういうことか、どれくらい大変なことなのかをあんまりわからないままにスタートしてしまいました。結果、部活に取られる時間があまりに長いと感じて。体力も時間も、そんなに労力をかけてまで陸上をする必要はあるのかなって、少し迷っていた時期はありましたね。

ーー体力面と時間のやりくりに悩みながらも、陸上を続けてこられたのはどうしてですか?

内山 大学2年でケガをして、長い期間練習をできない時期があったんです。それが練習を見直す大きなきっかけになった。それまで高校の延長で「根性練」を繰り返していたのを、陸上に重要な体幹に近い筋肉を意識して鍛える練習に変えて、競技力が上がりました。ケガをすごくポジティブに捉えられたのは大きかったですね。

 それに、自分が大学生活で本当にやりたかったことって何だったんだろうということを考えるようになって、意識も変わりました。そもそも全学の陸上部に入った理由は、インカレに出たいからだったなと思って。もうそこへ向けて本気にならなきゃいけないって。悩んでいる暇はないというか、しっかり腹を据えなければいけないと思うようになりました。

ーーケガで苦しんだ時期にトレーニングを見直せた、そして入学当初の目標に立ち返れた、と。

内山 はい、インカレで戦いたいという気持ちに素直になれた気がします。陸上について自分は才能ないってずっと思っているんです。最初からできるって人はいないのかもしれないですが、才能がないなりに強い選手に勝ちたいっていう気持ちもあったりして。それがインカレに出たい、東大生という肩書きじゃなくて、ジャンパーとして他大学陸上部と戦いたい気持ちにつながった。それが、続ける理由だったのかなと思います。

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