箱根駅伝をラジオ局はどう伝えているか。文化放送ディレクター「レース、選手の多様な情報を多方面で発信しているのが強み」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文&写真 text&photo by Sato Shun

――箱根駅伝の"おいしい聞き方"はありますか?

黒川 二刀流ですね(笑)。テレビで画像を見て、音はラジオという人がけっこういます。テレビは画像があるので、必要なこと以外は言わないんですよ。でも、ラジオは、この区間からこの区間まで何秒開いたとか、縮まったとか、タイムの秒差まで細かく伝えていく親切な媒体です(笑)。ですからチームの関係者や選手も移動しながらラジオを聞いている人がけっこう多いんです。あと、テレビは、事前に映像を用意しなければいけないのでストーリー立てする必要があると思うんですけど、ラジオはレースが一番というスタンスなのでストレートに伝えますし、他のネタもかなり豊富だと思います

――チーフディレクターとして、箱根駅伝放送の当日をどう迎えたいですか?

黒川 スタッフ一人ひとりにちょっとだけ頑張るという気持ちを持ってもらうことが中継の質の底上げになると思うので、そういうチームにして当日を迎えたいですね。チーフディレクターとしては、現場や実況で名前やタイムを言い間違える時があると思いますが、そこに絶対に気づける人間になりたいです。私も失敗するかもしれませんが、根拠のある失敗でありたいです。そのためには誰よりも取材をして、選手のことを知り、私が失敗したらしょうがないとみんなが思ってくれるぐらいのチーフディレクターにならないといけないと思っています

 本番当日は午前5時に出社し、当日区間変更が発表されると、新たに投入された選手の資料を作る。早朝に録れた音声データを編集し、午前7時30分に放送がスタートする。「それまでは、戦場です(苦笑)」。

 21チームの選手たちの熱い戦いが始まる。黒川さんは、「全員が無事に走りきってほしい」と願っているという。「プロ野球選手には(プロなので)そんなことは思わない」と苦笑するが、そう願う様はまるで寮母のようだ。休日も記録会に出向き、監督と学生の内に入り込み、箱根駅伝が大好き。そんな黒川さんが仲間と作る「箱根駅伝」だから、聞く価値は十分にある。

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