男子短距離界の実力者・小池祐貴。東京五輪100mで日本人初の表彰台は「確実にかなえたい。夢じゃなく目標」 (4ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by YUTAKA/AFLO SPORT

「山縣さんとは1年間一緒にいさせていただきました。練習の時は近寄りがたい雰囲気がありますけど、それ以外の時は本当に普通の人なんです。すごくメリハリがあって、それってすごく大事なことだなと思うんです。

 それに山縣さんは、自分より記録が遅い人でも積極的に話しかけて、何かを学ぼうとしている。それは僕も大事にしていて、たとえば中高生からでも学べるものがあるんじゃないかと、よく見ています。それだけでもいろんな発見があるんです」

 24日の日本選手権は、いまや日本記録保持者となった先輩を筆頭に、名の知れた実力者が集結し、これまでにないハイレベルな戦いが予想される。

「僕は100mと200mにエントリーしています。まずは100mで優勝したいですね。まだ日本選手権で勝ったことがないので。決勝で100%の力を出せるよう、予選からしっかり走りたいと思います」

 3位以内に入ることができれば、小池にとって初めての五輪出場となる。その舞台はどういう位置づけになるのだろうか。

「100mのキャリアはまだ始まったばかりなので、正直、通過点という気持ちです。この大会がゴールではなく、ここからスタートして、世界と戦えるところにいく」

 現在26歳と年齢的にはいい時期だが、東京五輪をさらなる飛躍のきっかけにするのは、ごく当たり前の考えであろう。その一方で、メダルへの意欲は隠そうとしない。

「100mでのメダルは確実にかなえたい。これは夢というよりは目標です。本気で狙っています。昨年、自分の成長を実感して『このままうまくいけばメダルを獲れる』って。その時からさらに成長していると思うし、(メダルは)不可能ではない。

 今シーズン、結果は出ていないですけど、ひとつのきっかけで『イケるかも』っていうモヤモヤしたものがあります。すごく抽象的ですけど......きっかけひとつで狙えると思います」

「勝算はあるか?」と聞くと、自信ありげな表情でこう返してきた。

「いまイケるかもっていうのが、ちょうどつかみかけているところです。期待してもらっていいかなって思いますね(笑)」

 小池の目標は「世界一になること」。そのためにも、まずは日本選手権でその実力を遺憾なく発揮してほしいと思う。

プロフィール
小池祐貴(こいけ・ゆうき)/1995年5月13日、北海道生まれ。立命館慶祥高校から慶応義塾大に進み、卒業後はANAを経て住友電工所属となる。学生時代は同学年のライバル・桐生祥秀の陰に隠れていたが、社会人になり急成長。2019年にはダイヤモンドリーグ・ロンドン大会男子100mで日本人3人目の9秒台となる9秒98をマークした。

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毎週日曜日 15:30〜16:00

スポーツジャーナリスト・佐藤俊とモリタニブンペイが、毎回、旬なアスリートにインタビューするスポーツドキュメンタリー。
強みは機動力と取材力。長年、野球、サッカー、バスケットボール、陸上、水泳、卓球など幅広く取材を続けてきた二人のノウハウと人脈を生かし、スポーツの本質に迫ります。
ケガや挫折、さまざまな苦難をものともせず挑戦を続け、夢を追い続けるスポーツヒーローの姿を通じて、リスナーの皆さんに元気と勇気をお届けします。

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