全日本大学駅伝で東海大に誤算。
8選手はどんな思いで走っていたのか (5ページ目)
それでも西田は踏ん張った。14キロ地点、駒澤大に追いついてきたが、並ばれそうになるとペースを上げて前に出た。アンカーの名取に1秒でも青学大との差を詰めて襷を渡そうという西田の意地が見えたシーンだった。
西田の走りを見ていると、昨年同区間の松尾淳之介(横浜DeNAランニングクラブ)の姿を思い出した。青学大の吉田圭太(現4年)に追いつかれながらも粘り、大きく差を広げられなかったことがアンカー名取の逆転劇につながった。
西田も苦しそうだったが、駒澤大のアンカー・田澤廉(2年)の力を考えると、少しでも差をつけておきたいと考えていた。
「6区まで苦しいレースが続いたんですが、それを立て直すのが4年生の役目だと。やる気はあったんですけど、体が動いてくれなくて。できるだけ駒澤大にタイム差をつけたいと思っていたのですが、結果的に名取に苦しい思いをさせてしまった」
西田は区間6位。トップの青学大との差は39秒で、逆転するにはギリギリのタイム差だった。それに駒澤大との差はわずか2秒。昨年も8区を走り、コースを知っているだけに不安はなかっただろうが、厳しい状況のなかで名取が走り出した。
名取は駒澤大の田澤とともに青学大の吉田を追った。9キロ手前で追いつき3人が並ぶと、10.6キロで吉田が遅れ、名取と田澤の一騎討ちとなった。ふたりの争いは、名取が前で引っ張り続けた。
「田澤選手はスピードがあるので、ラスト勝負になると分が悪いなって考えていました。走っていくなかで突き放すことができればと思っていたんですけど、僕にそこまでの力はなかった」
すると、18.5キロで田澤がスパートをかけると、名取は粘れずに離されていった。
「田澤選手のスパートに備えていたんですけど、足が動かなくて、ついていくことができなかった」
ここで勝負は決した。
名取は田澤との勝負で、いったんスピードを落として背後につくという選択肢はあったはずだ。だが、あえて前で勝負した。西田はこの走りに感銘を受けた。
5 / 6