2020.11.13

DeNA館澤亨次が挑む「5秒49の壁」。
1500mで57年ぶり快挙へ

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

 日本の男子1500mに新たな星が生まれそうだ。10月2日、日本陸上競技選手権1500m、館澤亨次(横浜DeNA)が、3度目の優勝を果たした。この勝利には、過去の優勝とは異なるシーンがいくつも垣間見ることができた。

日本選手権の男子1500mで優勝した館澤亨次 東海大時代、今年1月の箱根駅伝では主将としてチームを牽引。6区を走って区間新記録を叩き出し、自分の役割をしっかりと果たして卒業した。

 それから半年、いった何が変化したのだろうか。東京五輪を目指す館澤の進化と強さを紐解く──。

 日本陸上選手権で館澤はすばらしいレースを見せた。特筆すべきは、レース展開だ。東海大時代の2年、3年時にも優勝しているが、その時は中盤までは集団のなかに紛れ、終盤にキレのあるラストスパートで勝負していた。だが、今回はスタートからトップに立ち、そのままレースを引っ張って勝ち切った。

「今までは誰かに引っ張ってもらってラスト勝負という形だったので、結果がほかの選手の調子次第というところがありましたし、3連覇がかかった大学4年の時は完全に力負けでした。今回、横田(真人/TWOLAPS TRACK CLUB)さんのところで練習していて、『世界で戦っていくなら国内のレースはおまえが引っ張って勝たないと世界に通用しない。負けてもいいからやってみよう』と言われたんです。

 それで全日本実業団(対抗陸上競技選手権大会)から自分でレースを引っ張って勝ち切るプランにし、日本選手権(日本陸上選手権大会)もそのレースプランで臨みました。それで勝てたので、すごく自信がつきましたし、今後につながるいい勝ち方ができたと思います」

 先行逃げ切りのレースプランで、3分41秒32で優勝し、得意のガッツポーズを見せた。このシーンだけを見ると、今シーズンの好調さがうかがえるが、「前半は苦しかった」と館澤は語る。

「(今季)前半は箱根駅伝前に故障した箇所のリハビリが続いて、痛みが完全に取れたのが6月でした。ただ、新型コロナウイルスの影響でレースが中止、延期になり、その間ゆっくり治すことができたので助かりました。それから7月にホクレンのレースに出たんですが、この時はところどころで練習を消化できなかったり、ついていけなかったり......まだうまくかみ合っていませんでした」