全日本大学駅伝で東海大に誤算。8選手はどんな思いで走っていたのか (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

 いったい、市村に何が起きたのか。

「前日までコンディションはすごくよくて、自信はありました。でも、ウォーミングアップの時から体が動かなく、気持ちも上がらなくて......。襷をもらった時はタイム差を気にせず、順位を上げるつもりで走りました。5キロまでは青学大についていたんですが、それ以降はついていけなくて......。そこから焦りすぎて、目の前のレースに集中しきれなかったです」

 そう語るように、市川は17位に順位を下げ、トップの城西大との差は1分45秒となった。バスで名古屋に戻るなか、市川は3区塩澤、4区石原翔太郎(1年)の激走を映像で見ていた。

「僕の責任でこんなことになってしまって、塩澤さんと石原はすごくいい走りで、ありがたいと思う反面、すごく申し訳ないという気持ちでいっぱいです。中学の頃から勝負強さがなく、大学に入ってようやくそういうのがなくなったかなと思ったんですが......。今回こういう形で出てしまった。駅伝の走り方、ベースを含めて、もう一度しっかり考えていかないといけないと思いました」

 市川にとって、箱根までの2カ月は極めて重要になる。

 3区の塩澤はキャプテンらしい走りを見せた。

「予想外の位置で襷をもらったので、自分でもどんな走りをしていいのかわからなくなってしまったんですけど、前半はとりあえず追うしかないと思って、攻めました」

 2年連続して自身の地元区間を走った塩澤は、軽快にラップを刻み、6人抜きで順位を11位まで上げた。トップの早稲田大との差は1分26秒。ここでズルズルと後退せず、前との差を詰めたことで後半に可能性を残すことができた。

「どの大学とも差が開いていたので、抜いても単独走が続き、しかもレース前は追い風だろうと思っていたのですが、ほぼ向かい風で攻めた走りができなかった。前を走る青学大、駒澤大との差を詰めることができなかったのは、まだ力不足を感じました」

 塩澤の予想では、3位から5位ぐらいで襷を受け、追い風なら、昨年のレースで強さを見せつけられた東洋大・相澤晃(現・旭化成)の33分01秒を狙う。だが順位は想定外で、タイムも33分45秒だったが、区間2位の走りで石原に襷を渡した。

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