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波乱の100mを制した桐生祥秀。
タイトル獲得は大きな意味がある (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 新華社/アフロ●写真 photo by Xinhua/AFLO

 一方、この準決勝ではちょっとした波乱も起きていた。予選は2位で10秒22を出していたオグノデが後半伸びてこず、10秒32で全体の10番目のタイムで敗退したのだ。

 さらに決勝直前には、準決勝第1組で1位になっていた山縣が右ハムストリングに痛みが出て棄権。前回、17年大会の優勝者で10秒03を持つハッサン・タフティアン(イラン)も棄権していた。

 ライバルが一気に減り、手ごわい相手と言えば準決勝の同じ組で2位になっていた若いラル・ムハンマド・ゾーリ(インドネシア)と、第3組でトップになっていたフィッシャーくらいとなった。「ここで勝てないようでは世界では戦えない」という気持ちを持って、タイトル奪取を狙っていた桐生も、準決勝までとは違い、硬くなる要素も出てきていた。

 それでも桐生は、予選、準決勝と同じように力みのない走りで、うまく加速してゴールまで走り切った。

「今回は、自分に集中できているというのが一番ですね。他のレーンの選手がどうでも、自分の走りをしただけというか。今までは意識してもうまくできないところがあったけれど、レースでちょっとできるようになったかなと思えました」

 そんな思いと自信が重なったことが、冷静な走りを維持できた大きな要因だろう。

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