東海大のエース、關颯人と館澤亨次が語る「1500mからの箱根駅伝」 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

「いやー、情けない」

 館澤は悔しげに呟いた。

「昨年の日本選手権以降、まともに勝てていなくて、今日は勝ちにこだわるレースをしようと思っていたんですが、一番得意なラストスパートで負けてしまって......。情けないし、悔しいですね」

 レース展開はイメージした通りだった。500mぐらいでいい位置に出て、ラスト300mで前に出て、残り200mでスパートをかける。誤算だったのは、残り300mの地点で、余力がほとんど残っておらず、ラストスパートがいっぱいいっぱいになってしまったことだ。

「中途半端なレースでした。このままじゃダメですね。なんか昨年の日本選手権に勝ってからプレッシャーなのかわからないですけど、1500mを走る前、怖くなるというか、負けちゃいけないという気持ちが強くて......。海外だと気持ち的にラクに走れるんですけど、日本では負けちゃいけないって思ってしまうんです。全日本インカレで負けているから、もう王者でもないんですけど、変に考えてしまって。

 練習もしっくりこない日がずっと続いていて、それを打破するために今日は優勝したいなって思ったんですけど、それができなかった。負けられない関東インカレ、そして、日本選手権までに心の弱さをどうにかしないと」

 館澤は、憔悴した表情でそう言った。

 昨年、館澤は1500mで関東インカレ、個人学生選手権、日本選手権の3冠を達成。全日本インカレは6位に終わり、惜しくも4冠達成は逃したが、堂々たる成績を残した。

 だが、その3度の勝利が館澤の心に自信と不安を生み落とした。それまで挑戦者で追いかける立場だった者がいざ勝者となり、追いかけられる立場になると、途端に精神的な弱さを露呈してしまうケースがよくある。相手のことが気になり、自分のことに集中できなくなり、その地位を守ろうとすることばかり考えてしまう。真の勝者は負けることなど考えないが、そうでない者は自分が負けてしまうのではないかと恐怖を感じてしまう。

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