箱根駅伝の5区とは何か。「山の神」はいなくても必ずドラマは起きる (3ページ目)

  • 酒井政人●文 text by Sakai Masato
  • photo by Nishimura Naoki/AFLO SPORT

 細谷は身長170cm、体重51kgと軽量ボディで、山田も身長160 cm、体重50kgのミニマムボディ。20.8kmもの「距離移動」に加え、高低差850m近くも体を「持ち上げる」ことになる5区は、体重の軽い選手か、もしくはパワーのある選手が適している。前者は神野大地で、後者は柏原竜二というイメージだ。

 5区の記録保持者となった青木はどちらかというと後者のタイプだろう。関東インカレ1部3000m障害のチャンピオンで、脚力は十分にある。今回は、「1時間12分~13分台」を目指していたが、想定以上のタイムを残した。

 一方で、関東インカレ2部3000m障害王者である神奈川大の荻野太成(2年)も5区に挑戦したが、青木とは大きく明暗を分けた。大後栄治監督は「コンディションが良ければ1時間10分台。(少なくとも)1時間13分ではまとめたい」と自信を持っていたものの、結果は1時間21分12秒でダントツ最下位に沈んだ。

「体調はバッチリだったんですけど、走り始めから脚の運びがおかしかったですね。何回も山のシミュレーションをしてきたなかで、最後は体調を上げることに集中しすぎたせいか、本番ではそのときの感覚が抜けてしまっていました。普段はもう少し長く接地をして、ハムストリングスとお尻の筋肉を使うような走り方なんですけど、爪先だけで跳ねるような走りになって、ふくらはぎがパンパンになって動かなくなっていました」(大後監督)

 箱根駅伝は試走が禁じられており、特に5区は練習時の感覚を発揮しにくいため、初挑戦となる選手は良くも悪くもタイムが予想しづらい。以前ほどではないとはいえ、まだまだ影響力の大きい5区には、各校とも好選手を配置すべく、今後も頭を悩ますことになるだろう。

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