ケンブリッジ飛鳥に優勝を許した、桐生祥秀と山縣亮太の「ライバル意識」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 岸本勉/PICSPORT●写真 photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT

 レースはまさにそんな結果になった。先手を取ったのは山縣。準決勝でほぼ完成した走りをしながらも「30~60mくらいにポイントを置いていたが、あまりスピードが出てなかったのでまだ修正するポイントはあると思う」という反省を生かし、スタートからスムーズに加速して40m付近で完全に抜け出した。

 対して桐生はいいスタートを切ったものの、1次加速が若干鈍くなって山縣に先行されたことで、2次加速に入るところで力んでしまった。ふたりの勝負はそこで大勢が決したが、山縣には落とし穴が待っていた。

「山縣くんは持ち味が出たレースだったが、少し早く抜け出しすぎたとも思います。本人は60mまでを強く意識していたようだが、それは桐生くんの60mまでの強さを認めているから、そこまでにあまり離されないようにしようとしたんだと思う。

 だけど、山縣くんも60mまでが良すぎたというか……。今年はどちらかというとスタートでいいポジションにつけながら、最後は桐生をグーッと追い詰めるレースが多かったので、そこが少し狂ったのではないかと思います」

 伊東副委員長がこう話すように、50mを過ぎた時点では山縣が抜け出して自分の勝利
パターンに入ったかに思えたが、布施と前日の準決勝ではキッチリまとめていた終盤になると、明らかに固まってしまったような走りになった。そこにケンブリッジが襲いかかり、後半型というスタイルも有利に働き、0秒01だけ逆転して10秒16でゴールしたのだ。

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