日本選手権1万mで悲願の初優勝。悔し涙から4年、大迫傑がリオ五輪へ

  • 酒井政人●取材・文 text by Sakai Masato
  • photo by AFLO

 「狙い通り」のスパートを決めてライバルたちを引き離し、優勝した大迫 「狙い通り」のスパートを決めてライバルたちを引き離し、優勝した大迫 大混戦が予想された日本選手権の男子1万m。リオ五輪のキップをめぐる戦いは、熱気に満ち溢れていた。

 小雨が降る中、選手たちは5000mを14分05秒というハイペースで通過する。レースが大きく動いたのは残り6周だ。「集団のなかで我慢するのではなく、行って突き放そう」と考えていた設楽悠太(Honda)が口火を切った。

 突然のペースチェンジに対応できたのは、村山紘太(旭化成)と大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)のふたりだけ。ほかの五輪参加標準記録突破者は引き離された。トップ集団が3人に絞られ、いよいよ「本当の勝負」が幕を開ける。
           
 キック力のない選手が途中でペースアップすると思っていた大迫にとっては、予想通りの展開だった。あとは、どこでスパートをするべきか。大迫は研ぎ澄ませてきた「刀」を抜く瞬間を思案していた。そして、残り600mでアタックする。

「ラスト1周で勝負してもよかったんですけど、残り600mで前に出ました。誰かついてくるかなと思っていたので、余力を残して最後の勝負にかける感じだったんです。でも、スクリーンを見たら差が開いていたので、このまま引き離しにいきました」

 ライバルたちの動きを見て、大迫はさらにギアを入れ替える。10m、20mとその差は一気に拡大。ラスト1周の鐘が鳴ったあとも、大迫のスピードは加速していく。最後の1周は独走状態でトラックを駆け抜け、28分07秒44という好タイムで初優勝を飾った。

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