ケンブリッジ飛鳥に優勝を許した、桐生祥秀と山縣亮太の「ライバル意識」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 岸本勉/PICSPORT●写真 photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT

 6月25日の日本選手権男子100m決勝は、「これぞ五輪が懸かった決勝!」といえるレースだった。

 日本陸連の伊東浩司強化副委員長が「全員が100mのレース一本に集中していて、『私もこういう場で走りたかったな』と思うくらいに、スタジアムの雰囲気も良かった」と振り返るほどの緊張感に包まれたレース。あいにくの雨で向かい風も吹き、観客が期待する9秒台が出る可能性は低くなっていたが、熾烈な勝負と意外な結果に会場中がどよめいた。

優勝候補の桐生(左)と山縣(右)に割って入ったケンブリッジ(中央)優勝候補の桐生(左)と山縣(右)に割って入ったケンブリッジ(中央) 前日の準決勝のトップタイムは、向かい風0.3mの1組1位のケンブリッジ飛鳥(ドーム)だったが、山縣亮太(セイコー)と桐生祥秀(東洋大)は向かい風1.4mの2組を走り、山縣が10秒26で先着して桐生は10秒29。気象条件差を考慮すれば、決勝で山縣と桐生に注目が集まるのも当然だった。

 山縣と桐生、ふたりの今季の戦いは山縣の2戦2勝。6月5日の鳥取・布施スプリントでは、向かい風の条件ながら10秒09で走った桐生を、山縣が終盤に逆転して自己新の10秒06で優勝した。終盤の走りが乱れていた桐生に対し、山縣はスタート後の加速から終盤までをしっかりまとめ、9秒台突入を確信させる走りを見せた。

 桐生も負けたままではなかった。その1週間後には「技術チェックのために」と、平塚で行なわれた日本学生個人選手権に出場。リラックスした走りで自己タイの10秒01を叩き出し、9秒台を狙う第一人者としての存在感を示した。

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