ケンブリッジ飛鳥に優勝を許した、桐生祥秀と山縣亮太の「ライバル意識」 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 岸本勉/PICSPORT●写真 photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT

 桐生は10秒31の3位。参加標準記録を突破して優勝したケンブリッジと、派遣設定記録の10秒01を突破している桐生が五輪代表に内定し、山縣は“有力”という結果になった。

 ケンブリッジはレース後、「イメージ通りのレースができたし、緊張感もなく楽しんで走れました。最後はギリギリだったけど、トップスピードに乗る前には『これなら追いつけるかな』と思いました」と会心の笑みを浮かべた。山縣は「決勝が一番いいレースだったが、そのなかで結果が伴わなかったのは、まだまだ自分の力が足りないということ」と反省。そして桐生は、「準決勝で行ける感じがしていたので緊張もしていなかったが、こんな形で五輪を決める予定じゃなかったので、ものすごく悔しい」と涙を流した。さまざまな意識が交錯したレースを、伊東副委員長はこう振り返った。

「桐生くんと山縣くんが互いに力が入ってしまうと足元をすくわれるかなというのはあった。ケンブリッジくんも90mあたりではふたりに追いつくと思って走ったのではないでしょうか。桐生くんも本来なら60m地点でもう一回転上がるところだが、最後のほうで少し表情が崩れていたから痙攣のようなものがあったのかもしれません。山縣くんも最後は硬くなっていて、私も経験したが、本人のなかでは時間が過ぎるのが遅く、空間を広く感じるものなんです」
 
 伊東副委員長は、「桐生と山縣には布施スプリントがターニングポイントになったのかもしれない。そのときの競り合いが頭の中に残ってしまったから、互いに力が入ってしまったのではないか」と続けた。それが普通のレースならまだしも、五輪代表がかかった日本選手権になれば、その力みは自分が思っている以上に出てしまうものなのだ。

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