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「病と闘う子どもたちのヒーローになる」。車いすテニス・16歳小田凱人の「世界1位」になるための旅は始まったばかり (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

国枝慎吾はやっぱり強かった

 その小田が納得の笑みを見せたのは2回戦後。リオデジャネイロ・パラリンピック単金メダリストのゴードン・リード(イギリス/30歳)に快勝したあとのことだ。

「リードは、自分がテニスを始めたころに見た選手。同じ左利きということもあり、参考にさせてもらったことも多かった」

"お手本"の相手に勝てた事実は、自分の成長を実感する何よりの証左になっただろう。

「あらためて考えてみると、5〜6年でここまで来て、彼に勝てたのは素直にうれしいです」

 自らが踏破してきた道を振り返り、彼は感慨深げに言った。

 だが、小田の快進撃は翌日、2−6、1−6のスコアの敗戦で止まる。敗れた相手は「国枝慎吾」。いわば、小田のテニスキャリアの原点だ。

「あらためて、強かったなと率直に思います」

 素直に相手を称えた小田は、国枝の強さのわけにも言及する。

「細かいところで言えば、ショットの深さだったり......サービスエースをかなり取られたのもあるし。自分はああいう舞台で身体が動かなかった。そこで力の差も感じました」

 そのうえで彼は、自分に言い聞かせるように言った。

「国枝選手に勝たないと、ランキング1位も見えてこない。どこかで攻略法を見つけて、戦っていかなくてはいけないと思っています」......と。

 ベスト4の結果にも「本気で優勝を狙いにきていたので、どこで負けようが一緒なのかなと思います」と、小田は目いっぱい悔しがった。その悔しさもまた、この舞台に来たからこそ得られた財産。

 それら両手に抱えた手土産を、2年後のパリ・パラリンピック、そして世界1位へと至る原動力とし、小田凱人はこれから幾度も凱歌を奏でるはずだ。

国枝慎吾、全豪OP優勝の一打は「ゾーンに入った」。テニスを辞めようとさえ考えた孤高の王者に何が起きたか

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