2022.06.07

「病と闘う子どもたちのヒーローになる」。車いすテニス・16歳小田凱人の「世界1位」になるための旅は始まったばかり

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 初夏のパリ開催の全仏オープンで、今年、ひとりの"プロ車いすテニスプレーヤー"がグランドスラムデビューを果たした。

 彼の名は、小田凱人(ときと)。

 自らの名の由来でもある凱旋門がランドマークの町で、5月8日に16歳の誕生日を迎えたばかりの少年は、男子シングルス・ベスト4に食い込む活躍を見せた。

16歳でGSデビューを果たした小田凱人16歳でGSデビューを果たした小田凱人 この記事に関連する写真を見る  伸びた背筋に、強い意志の光を放つ双眸。ヒーロー然とした佇まいの小田は、「病と闘う子どもたちのヒーロー」になることを志し、去る4月にプロ転向を宣言した。

「これからは選手として日本のパラスポーツを盛り上げ、障がいのある子どもたちも活躍できる世の中を作っていける選手になり、今病気と闘っている子どもたちのヒーロー的な存在になれる選手を目指して、頑張っていきたいと考えています」

 それがプロ転向会見で、彼が口にした所信。早くからの活躍を渇望するのも、自分と年齢の近い少年少女たちに希望を与えたいと望むからだ。

 新たな旅立ちの門出で、全仏オープン出場が叶ったのも運命的だ。

 グランドスラムの車いす部門は、世界の上位8名のみが参戦できる狭き門。今年4月時点の小田の世界ランキングは9位で、従来のルールなら一歩届かないはずだった。

 それが、2年後にパリ・パラリンピックを控えていることもあり、全仏オープンは今年から車いすテニスのドローを「12」に拡張。かくしてプロ転向直後に、小田はグランドスラムデビューを果たす。それは、「史上最年少世界1位」を目指す小田にとって、このうえない僥倖だった。

 小田が車いすテニスを始めたのは、10歳の頃である。9歳で発症した骨肉腫のため、左足の自由を失い、それまで打ち込んでいたサッカーはあきらめざるを得なくなった。

 それでも、何かスポーツをしたいとリハビリに励んでいた時、少年はYouTubeで"ヒーロー"を目にする。それが、2012年のロンドンパラリンピックで金メダルを獲得した「国枝慎吾」。その姿に魅せられて、彼はラケットを手にした。