多くの人を惹きつける全盲のランナー唐澤剣也。「数百人いるチーム」で銀メダルをつかんだ (4ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 吉村もと●撮影 photo by Yoshimura Moto

 また、「5000mは金メダルを目標にしていたし、1500mもメダルを逃してしまったので、両種目ともまだ課題があるなと感じた。もっと持ちタイムをあげ、スピード持久力もつけたい」と、さらなる成長を誓った。

 唐澤の挑戦を間近で見守ってきた星野コーチは、「今回は『上出来』と思っている。練習すらしていなかった選手が5年でメダルを獲得するなんて、当時は思ってもいなかった。だが、5000m決勝、1500m予選、決勝と3本のレースをきっちり走りきったことに感動している。人間、やればできるんだなと思った」と愛弟子を称えた。

 このすばらしい結果をもたらしたのは、彼自身の努力はもちろんのこと、前述のとおり周りの協力も大きかったと星野コーチは振り返った。

「今では1カ月間、日替わりでもできるくらいの人数」となった伴走者たちに加え、道路など練習環境の整備などで群馬県や前橋市の協力もあった。「地域が、唐澤のために動いてくれた。数百人のチームメートがいるのではと思っている」

 初挑戦の夢舞台を終え、唐澤は改めて多くの人の支えに対し、感謝を述べた。

「一般に陸上は個人競技のイメージがありますが、視覚障害の選手はガイドランナーと走る。陸上競技を初めて競技歴も浅い僕が1人で走ったら、全然、力のない選手だが、ガイド2人の経験や力も含めて、チームとして戦える。心強い存在と一緒に臨めるのが、この競技の強みと思っています」

 唐澤はこれからも、大勢の二人三脚で世界の舞台を駆けていく。

◆集英社ムック
『Sportiva TOKYO 2020 オリンピック 総集編』好評発売中!

発売日:8月23日
定価:1760円(本体1600円)

【内容】

●Medal獲得数は58個!
日本人メダリストを紹介

●ニッポン野球の底力!
侍ジャパン、歓喜の金

●サッカー U-24日本代表
本気で金メダルを狙った男たち
「史上最強」ゆえの涙

●前代未聞のオリンピックが開幕するまで
険しすぎた道のり

以上のほか、必読の特集が満載。永久保存版の1冊‼

購入はこちらから

‣Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/4081023336

‣セブンネット
https://7net.omni7.jp/detail/1107224540

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る