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国枝慎吾、王者感の喪失が生む探求心
「答えを見つける能力は上がっている」 (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • photo by SportsPressJP/AFLO

―― そうした経験が加味されて、選手としては熟練の域に達してきていると思いますが、まだ"挑戦者"という気持ちが大きいですか?

国枝 20代のころよりも、より挑戦できるようになってきていると思います。浮かんだアイデアに果敢にチャレンジできるのは、昔より「王者感」がないからだと思います。みんながレベルアップしてきて、今の男子のトップは本当に紙一重の戦いになってきています。周りが上がってくるのに自分が現状維持のままだと、結局は衰退しているということなので、そこは一番危惧しています。

―― 昔よりも「王者感」はない、ですか。

国枝 はい。試合に入ったら今まで通り「俺が最強だ!」と思ってプレーしていますが、昔よりも負ける回数が増えたのは間違いないことで。でも、負けたときが一番頭が働いているし、試合を離れた時に常に自分を疑っているというか、この技術はこれであっているのか、もっと他にヒントはないのかというのは、探り続けてますね。昨年だけみても、1月のオーストラリアの時と11月の世界マスターズでは、実は打ち方も全然違うんですよ。つまり、去年は8回負けたけど、8回そういうチャンスを活かして成長したということ。もちろん、負けたらめっちゃ悔しいですよ。たぶん、昔より悔しがってると思う。ただその分、同じことを繰り返さないためにどうしたらいいか、自分の中で答えを見つける能力が上がっていると思います。

―― 昨年、勝った数が一番多かったというのも、そういう背景があるんですね。

国枝 負けた次の試合で優勝することがすごく多かったですね。セントルイスもしかり、ウインブルドンのあとのブリティッシュもそうだった。逆に言えば、東京パラリンピックまであと何回負けるか、その負けた数だけさらに成長するチャンスがあると捉えています。

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