「どれだけ年齢のことを聞いてくるんだよ」と窪木一茂 年齢を超越する競輪への意欲と集大成となるロス五輪への覚悟
自転車競技と競輪で活躍する窪木一茂 photo by Manabu Takahashiこの記事に関連する写真を見る
【暴れ出した自分】
アルカンシェル――
自転車競技の世界選手権で優勝者に贈られる虹色のジャージ。同競技を極めようとする者であれば、誰もが憧れるウェアだ。
そのウェアに袖を通した数少ない日本人選手のひとりが、窪木一茂(福島・119期)。2024年10月に開催された世界選手権のスクラッチで金メダルを獲得し、アルカンシェルを身にまとった。
スクラッチとは1周250mのトラックを60周、計15キロ走って順位を競うシンプルな中距離種目(現在は10キロに変更)。窪木は優勝を決めるそのレースが終盤に差し掛かったころ、これまでにない感覚に襲われていた。
「積極的に走ろうとは思っていなかったんですが、レース中に暴れたい自分が出ましたね。最後はひとりで2ラップして逃げ切って優勝という、すごく強い走り方で勝ちました。本当にあれだけいいメンバーがいたのに、よくあれだけギアもかけて、体も動いたなと思います」
最後は窪木がメイン集団を半周ほど突き放してそのままゴールラインを1着で通過。アルカンシェルを手にした時の気持ちを窪木はこう語る。
「高校1年から自転車競技を始めて、その当時から世界一がどのくらいすごいのかというのはわかっていました。だからそれを着用した時のインパクトは大きかったです」
震えるほどの感動を味わった窪木は、翌2025年10月の世界選手権で今度は全4種目で争うオムニアムで銀メダルを獲得。腰痛を抱えながらのレースで試合後には「悔しい」と唇を噛んだが、2022年、2023年のスクラッチで銀メダルを獲得しており、これで4年連続表彰台に上るという快挙を成し遂げている。
世界選手権での優勝でアルカンシェルを着用した窪木この記事に関連する写真を見る 窪木は現在36歳。ナショナルチームのメンバーのなかでは最年長で、トップカテゴリーのスポーツ界においてはベテランと呼ばれる年齢だ。その観点から見ても窪木の成績は驚異的なことに思えてくるが、そのことを本人に問うと、一呼吸おいて話し始めた。
「実はたくさん言われます。『年齢を重ねるごとに強くなりますよね』とか、『本当に36歳なんですか』とか......。どれだけ年齢のことを聞いてくるんだよと思っています」
そして「年齢という数字は関係ない」ときっぱり言い切った。終始、冷静かつ淡々と自らを俯瞰するかのように語る窪木のこの言葉に、穏やかだった雰囲気がピリッと引き締まる感じがした。
窪木が年齢を感じさせない結果を出し続けられるのは、いったいなぜなのだろうか。彼の競技人生から探ってみたい。
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