「賞金5000万円? 今、知りました」GⅠ競輪祭で阿部拓真が競輪史に残る大下克上優勝「自分でも『マジか』って感じ」 (3ページ目)
【競輪の魅力を体現する大下克上】
ゴール直後、何度も右の拳を振って喜びを爆発させた阿部。ウイニングランを終えて敢闘門に帰ると、ヘルメットを投げ入れるファンサービスで大歓声に応えてみせた。
「最後も余裕はなくて、レースについていくことだけに集中していました。(吉田)拓矢がいい仕掛けでチャンスを作ってくれて、本当にありがたいです」
興奮を隠しきれない表情で同期への感謝とともにレースを振り返り、展開については「よく覚えていない」と笑った。
この優勝で年末のグランプリへの出場も決定したが、自分でも驚きの躍進に「何月何日がグランプリかも、いつ競輪場へ入ればいいのかもわからない」と困惑。「賞金5000万円の使い道は?」と聞かれても「(金額を)今知りました」と集まった報道陣を笑わせた。
賞金ボードを掲げる阿部 photo by Takahashi Manabuこの記事に関連する写真を見る
過酷なスケジュールのなかでも「レースを心から楽しめました」と、最後まで明るい笑顔を絶やさなかった阿部。その口からは先輩や支えてくれた家族への感謝の言葉が続いた。来年はS級S班となって重圧との戦いも待ち受けるが、レース後に「先輩から大笑いで迎えられた」という愛される人柄は、今後も変わらぬ大きな武器となるはずだ。
実はこの競輪祭の阿部の選考順位は108人中76位。それでも目の前の一走一走を楽しみ、集中して走り抜くことで描ききったシンデレラストーリーには、展開やラインの妙で波乱が巻き起こる競輪の魅力が詰まっていた。こんなことがあるのだから、選手もファンも、この言葉を使わずにはいられないのだろう。
「競輪は、何が起こるかわからない」
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