競輪・深谷知広が「40歳で引退」と語る真意 若手ともがいた今夏の練習で芽生えたある心境とは (4ページ目)
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【40歳で引退の真意】
それでもナショナルチームでの活動を振り返る中で、深谷は後悔の念も語っている。圧倒的な力があれば、もしかしたら出場のチャンスがあったのかもしれない。そんな心残りがあった。
「今思えば、スプリントに100%でいけていなかったのがダメだったのかなと思います。気持ちは100%でしたが、生活のすべてを犠牲にするところまではいけなかった。90%くらいだったかなと思います。自分はどんなことでも80%くらいで満足しちゃうところがあります。やりたいこともいっぱいあるし、いろんなことに気持ちが向きがちな性格だと思います」
小さい頃からの車好きは今でも変わらず、彼のYouTubeチャンネルにはいくつもの車関連の動画が上がっているほどだ。同時にそれ以上の熱量を自転車競技と競輪に注いできた。
競輪デビューから17年目、ここまでトップレベルを維持し続け、今年も2月のGⅠ全日本選抜競輪で決勝3着、6月のGⅠ高松宮記念杯競輪で決勝7着と存在感を見せている。11月19日(水)から始まるGⅠ競輪祭でも優勝候補のひとりで、賞金ランキング(11月18日現在)ではKEIRINグランプリ2025出場圏内の9位にいる。
そんな深谷の意識にこの夏、唐突に変化が訪れていた。
「今の位置にしがみつくことはできるかなと思っていますが、ここから上がっていくのはちょっと難しいなと感じています。今年の夏ごろ、若手と合宿でもがいている時に、『ここで限界かな』という瞬間がありました。力としては、完全にピークは越えたなっていう感じです。今はフラットの状態から落ち始めてきたので、最終段階に入ったなという思いはあります」
続けて「競輪は単なる力比べではないので、まだやれることはあると思っている」と語り、「モチベーションが下がることもない」と言う。そんな時に出てきた言葉が「40歳で引退」だ。
「自分で決めて引退するということは、その時点で次にやりたいこと、将来のプランが見つけられているのが前提になりますし、それを見つけたいという思いもあります。だからそれを見つけられたら、引退が40歳より早まる可能性もありますし、逆に遅くなる可能性もありますね」
もともと興味の対象が多い深谷。そこに自身の競輪におけるピークを知り、人生のプランを考え始めたのだろう。
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