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競輪・岩本俊介が41歳にしてS級S班(上位9人)で奮闘中 陸上への未練と変化、無茶な練習を経て辿り着いた境地も明かす (4ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro

人格者として知られる岩本 photo by Hirose Hisaya人格者として知られる岩本 photo by Hirose Hisayaこの記事に関連する写真を見る

【目指すはGⅠ制覇、そして最後の日までやりきること】

 ずっと引きずっている思いがある。学生時代に情熱を燃やした陸上競技では生活を支える職業にできなかったため、未練を残したまま競技を引退していた。

「残念ですが、自分にはそれだけの能力がなかったんです。最後に出た試合のあとの喪失感は今でも覚えています。すべての情熱をそこに向けていましたからね。陸上を失い、抜け殻のようになりましたが、そこから競輪に目を向け、陸上に注いでいたエネルギーをぶつけたんです。

 ただ、今でも陸上選手として走っている夢を見ますし、オリンピックなどで活躍する選手を見て、自分はあのようになれなかったんだと寂しく思うこともあります。その寂しさが原動力になっていますし、それがあるから今も競輪を続けられているのだと思います」

 しかし、近年、心境に変化が生まれた。「陸上がなくなったから、次は競輪というのは、やはり違うと自分自身が心から思うようになったんでしょうね。最近は、純粋に自分は競輪が好きなんだと思うようになってきました」と話す。

 その気持ちを確かなものとするために、今はGⅠでの優勝を望んでいる。直近では6月17日(火)~22日(日)の第76回高松宮記念杯競輪、その先では8月12日(火)~17日(日)の第68回オールスター競輪がターゲットとなる。

「妻がタイトルを欲しがっているんです。それに僕もGⅠを獲れば自分のなかで、陸上をいい思い出として変えられると思っています。その節目を作れるように早くGⅠで勝ちたいです」

 競輪選手としての最後の日まで仕事をやりきり、全うすること。それも目標だ。

「寂しい話ですが、いつか引退が来る。どういう終わり方が来るにせよ、しっかりやりきって終えたい。そこも長いスパンで考えています」

 座右の銘は『一途』。ただひたすらに目の前のことに全力で取り組んできた。ここからも同じスタンスで競輪に向き合い、人として成長しながら、新たな境地を切り開くつもりだ。

【Profile】
岩本俊介(いわもと・しゅんすけ)
1984年4月13日生まれ、千葉県出身。中学ではバスケットボールに励み、高校から陸上競技を始める。100mの選手として活躍し、大学3年・4年では関東インカレ2部で連覇を達成する。大学卒業と同時に競輪学校に入学し、2008年にデビュー。翌年にはGⅠに出場するなど、すぐに頭角を表す。その後も安定した成績を残し、2024年の日本選手権競輪でGⅠ初の決勝に進出。年末のKEIRINグランプリにも初出場を果たすとともに、S級S班に昇班した。

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