競輪・岩本俊介が41歳にしてS級S班(上位9人)で奮闘中 陸上への未練と変化、無茶な練習を経て辿り着いた境地も明かす (2ページ目)
S級S班として「期待とプレッシャー」を感じながら戦う岩本 photo by Takahashi Manabuこの記事に関連する写真を見る
【焦らず、長いスパンで考える】
昨年に大きく飛躍した岩本だが、2008年のデビューから確実に勝利を積み上げ、2009年からはGⅠのレースに出場。そこからGⅠ決勝の舞台にはなかなか手が届かずにいたが、安定した戦いぶりは早くから評価されていた。その過程で、レーサーとしてひとつの結論にたどり着いたという。
「そもそもGⅠ云々以前に、通常開催のレースでもうまく走れないほどの不調になったことが何度もあります。これはどんなスポーツでも起こり得るのかもしれませんが、練習もトレーニングも順調で、レースの組み立ても悪くないのに結果が出ないことってあるんです。
そういうときは意固地になってしまいがちですが、何かひとつのことで状況を改善しようと考えるのではなく、心を柔らかく持って、周りの声にも耳を傾けながら、焦らず時間をかけて修正していくしかない。間違ったことさえしていなければ、ケガが治るのと同じで、時間が経つにつれて、少しずつまた噛み合っていくものなんです」
最もやってはいけないのは「他人と比べることだ」と岩本は言葉を続ける。
「自分も30代前半で調子を落としたとき、練習が足りないのではないかと不安になり、無茶なトレーニングをしたこともあります。ただそれをやると体を壊しますし、精神的にも追い込まれていきます。よくあるのが結果の出ている、ほかの選手がやっている負荷の高いトレーニングを部分的にマネすること。
でも、そこだけ切り取っても、そこに至るまでの積み上げや継続がなければ結果にはつながりません。ですので、今、若い選手には"自分を大切にすること"、"継続していくこと"を伝えたいと思っているんです」
短期間で強くなることはありえないし、不調から脱するのも短い期間で考えると無理が生じる。何事も長いスパンで考えること。それが何度も失敗しながら至った境地だ。そして岩本自身、時間をかけて試行錯誤した結果、今、自分が取り組むべきトレーニングがわかり、実践できているからこそ、昨年のブレイクがあったと考えている。
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