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カーリング世界選手権、五輪切符を逃した日本代表フォルティウスには何が足りなかったのか (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・文 text&photo by Takeda Soichiro

 また、吉村は大会中、ショットについては「みんなよく投げている」「フィーリングはいい」と言っていた。もともと世界ツアーでトップ10に入るようなチームだ。デリバリー技術は世界に遅れを取らない。トルコ戦に出場したフィフスの小林未奈を含め、5選手それぞれに好ショットがいくつも見られた。

 だからこそ、ショットの繋がりが欲しかった。

 小谷がセットアップを2本そろえても、小野寺のチャンスメイクでミスが生まれたり、逆に小野寺が安定感を見せた試合では、小谷のところで一手遅れるケースもあった。

 全選手の調子の矢印が同じタイミングで上を向くエンド、ゲームは少なく、吉村にシンプルなフィニッシュを残して複数点という、彼女らが今季見せていた"フォルティウスらしさ"は影を潜めてしまった。

 時間帯や外気によって変化の大きなアリーナアイスへの対応、ラウンドロビン終盤で行なわれたストーンの研磨など......結果がついてこなかった要因、アイスリーディングが進まなかった理由はいくつかあるだろう。しかし厳しい言い方にはなるが、基本的にそういった条件は参加13カ国、皆同じだ。

 スイスやカナダ、韓国やスウェーデンなどの上位陣は、情報のないアイスでも星を落とさなかった。調子が上がらなかったり、ミスが出たりしても傷口を最小限にとどめ、スタンディングの上位に立っていた。

 無論、フォルティウスが強さを示す部分もあったし、大会を通して数々の収穫も得た。

 近江谷はアイスリーディング初期の段階から安定したショットで、チームに情報とセットアップを献上し続けた。小谷はセンター裏、あるいはコーナーへのドローを果敢に投げ込みチャンスの糸口を探った。

 エース・スイーパーの小野寺は12試合を通してブレることなく、好スイープで石を目的地へ運んだ。小林は与えられたチャンスで役割を果たし、フィフスとしての存在感を見せた。

 吉村は常に重圧にさらされていたが、時にミスが出てもネガティブな言葉を封印してチームを鼓舞し続けた。

 点差をつけられても10エンドまでにタイへと戻す、チーム持ち前の粘り強さは健在だったし、LSD(ラストストーンドロー。※試合前の練習後に投石して先攻・後攻を決めるものの平均値)は21.53cmという好成績を記録した。さらに、ストーンに意図的に超過回転をかけて独特の軌跡を生む「スピナー」を試すこともできた。

 今後求められるのは、これらをさらなる武器に昇華させることだ。

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