パリオリンピック日本の旗手・江村美咲は女子サーブル「世界女王」 強さの理由を東京五輪金メダリストが分析 (3ページ目)

  • 宇山賢●文 text by Uyama Satoru

 そして最後は、日本のコーチ陣です。これまでにも多くの選手たちが「サーブルでもオリンピックのメダルを!」と高みを目指してきたものの、残念ながらその夢を叶えることはできませんでした。ですが外国人コーチを招聘し、他国の優れた技術を学ぶようになった近年は競技力も飛躍的に向上して、目標が現実になろうとしています。

 選手が好結果を出すには、国内のサーブルを支え続けてきた日本人コーチたちの存在が不可欠です。複数のメソッドを理解し、個々の能力に合わせて消化していく課程は非常に複雑なため、日々の細かいコンディショニングが求められます。さらに、文化や環境などを理解した日本人コーチが外国人コーチと円滑なコミュニケーションを図ることで、選手たちのよりよいパフォーマンスを引き出すこともできる。

 現在、指導にあたっているコーチ陣の胸の中には、かつて同競技で世界を目指した過去の自分と重ね、「代わりに夢を叶えてほしい」という熱い気持ちがあると感じます。その思いが報われる瞬間を楽しみにしています。

【注目度が高まることでのプレッシャーの影響は?】

 7月26日の開会式では旗手の大役を見事に務めあげ、世界選手権2連覇を達成するなど輝かしい活躍を見せた江村選手の認知度は高まってきています。そのなかで、プレッシャーの影響を心配される方もいらっしゃるのではないかと思います。

 世界で結果を残せるようになると、人前に出たり、注目される場に呼ばれることが多くなります。私も最初の頃は、コメントなどを求められた時にうまく話せず、後になって「こんなことを言えばよかった」と後悔することもたくさんありました。

 競技のパフォーマンスと同じで、数をこなすうちに少しずつ慣れていきます。やがて客観的な視野を持てるようになり、「この場で何を伝えるのが最適か」を考えながらアウトプットできるようになっていきました。

 江村選手のインタビューやコメント、SNSでの発信を見ると、すでにいくつもの大舞台を経験している自信を感じますし、周囲から何を求められているのかを理解している印象があります。高まる注目度やその責任を感じながらも、それらをポジティブに捉え、自身の目標である金メダル獲得まで突き進んでくれることを期待しています。

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