パリオリンピック日本の旗手・江村美咲は女子サーブル「世界女王」 強さの理由を東京五輪金メダリストが分析 (4ページ目)

  • 宇山賢●文 text by Uyama Satoru

【トーナメント表から見る個人戦の展望】

 7月25日にフェンシング競技のトーナメントが発表されました。近年の対戦成績と照らし合わせて、女子サーブル個人での注目カードを見ていきたいと思います。

 まずは準々決勝で対戦する可能性がある、韓国のチョン・ハヨン選手です。過去の戦績を見ると、2022年12月の対戦では15-5で圧勝していますが、2023年12月に対戦した時は14-15で惜しくも敗れています。非常にパワフルなフットワークを特徴とする"韓国スタイル"に対して、どのようにゲームメイクをしていくのか。序盤から流れを引き寄せられれば、安定した展開になると予想しています。そして準々決勝を突破できれば、メダル獲得がほぼ現実のものとなるでしょう。
 
 次の準決勝は、江村選手が直近の対戦で敗れている、東京五輪の同種目の銅メダリストであるマノン・ブリュネ選手(フランス)、同国のシリア・バーダー選手、過去に僅差で勝利を収めているユン・ジス選手(韓国)らの勝者と剣を交えそうです。

 準決勝ともなると競技力は拮抗しているため勝敗の予想は難しいですね。試合までの準備、当日のコンディション、序盤の流れといった多くの要素のうち、少しでも上回った者が決勝に進むでしょう。またフランス勢との対戦は完全アウェーとなるため、開催国の応援パワーをどのようにコントロールするかが非常に楽しみでもあります

 個人的な感覚からすると、「オリンピックで金メダルを獲得する」ではなく、「世界選手権3連覇を目指す」といったイメージで試合に臨むほうがいいのではないかとも思います。目標を実現可能なものに転換することが、江村選手の最高のパフォーマンスに直結するのではないかと。

 通常のオリンピックでは4年間の準備期間がありますが、今回は3年間と非常に難しいコンディショニング調整が求められました。その結果が1日ですべて確定してしまうのがオリンピックです。

 世界中の選手がオリンピック出場、メダル獲得を目指してトレーニングに励んでいます。そのチャンスを掴んだ江村選手のパフォーマンスに期待するとともに、アスリートにとって最高の夢の時間を全力で楽しんでほしいと思います。

【Profile】
宇山賢(うやま•さとる)

1991年12月10日生まれ、香川県出身。元フェンシング選手。2021年の東京五輪に出場し、男子エペ団体において日本フェンシング史上初の金メダルを獲得。同年10月に現役を引退。2022年4月に株式会社Es.relierを設立。また、筑波大学大学院の人間総合科学学術院人間総合科学研究群 スポーツウエルネス学学位プログラム(博士前期課程)に在学中。スマートフェンシング協会理事。スポーツキャリアサポートコンソーシアム•アスリートキャリアコーディネーター認定者。

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