角界一の歌唱力を誇る髙安の奥様は演歌歌手 家族の影響と歌がうまい関取が多い理由 (2ページ目)

  • 飯塚さき●取材・文 text by Iizuka Saki

【歌のうまい相撲取りが多い理由】

幼少期の髙安関(左)と母。実家のレストランにて 写真/本人提供幼少期の髙安関(左)と母。実家のレストランにて 写真/本人提供この記事に関連する写真を見る――ちなみに、ご自身で歌がうまいと気づいたのはいつごろでしたか。

髙安 気づくとかはなかったと思いますが、褒めてもらえることがよくあって、褒められるとうれしいですよね。妻と会ったときも、本業の人に褒められるのはうれしかったです。

――奥様との馴れ初めは、どのような感じだったのですか?

髙安 初見は、毎年2月に国技館で行なわれる「福祉大相撲」です。その、お相撲さんと歌手が歌うコーナーです。2回目に会ったのが、部屋の千秋楽パーティー。細川たかしさんが、部屋の後援会の最高顧問になったんです。それで、細川さんがよく千秋楽パーティーに来て、ステージで歌っていました。一番弟子の妻は、いつもついて来ていて一緒に歌っていたので、それから仲よくなりました。

――まさに、お相撲と歌がつないだご縁だったんですね。現在、関取の十八番は?

髙安 一番よく歌うのが平浩二さんの『バス・ストップ』。昨年2月の福祉大相撲でも歌いました。この曲は、妻がコンサートでカバーして歌っていて、それがよかったので自分も練習して歌えるようになりました。

――そうでしたか。奥様からの"輸入"もあるんですね。

髙安 あります、輸入ですね。食事の2次会やパーティーなど、人前で歌う機会は結構ありますので、いろいろ練習します。

――いま練習中で歌いたい歌は?

髙安 特にないんですが、レパートリーは増やさなきゃいけないですね。ただ、最近の歌は難しいです。歌える曲もあるんですが、昔と違って曲調が変わってきているというか。『Bling-Bang-Bang-Born』(Creepy Nuts)とか、ああいうのはきついですね。

――ご自宅でカラオケをすることもあると伺いましたが。

髙安 カラオケ機器ではないんですが、テレビのアプリに契約して、それにマイクをつけて歌っています。妻はポップスも歌いますし、3歳の娘は童謡の『チューリップ』の歌をフルコーラスで歌えるようになりました。

――かわいいですね。娘さんは、将来歌手になりたいなどと言いますか。

髙安 それはまだ言わないですね。いまはシンデレラとか、ディズニープリンセスが大好きなので(笑)、将来何をするかは未知数です。ただ、妻はピアノや津軽三味線とか、何か芸事をやらせたいとは思っているみたいです。妻も、若い頃からピアノと津軽三味線を習っていたので。たぶん運動神経もいいと思うので、本人のやりたいことをさせてあげたいです。

 あとは、自分が中卒なので、学業もいい環境でさせてあげたい。ちゃんと勉強してもらって、将来幸せな人生になるように、いろいろな経験をしてほしいですね。

――可能性は無限大ですね。ちなみに、一般的にお相撲さんは歌がうまいと言われることが多いと思いますが、そのあたりはどう思いますか。

髙安 声はお腹から出すものです。お腹に力が入っていないと、気の抜けた声になってしまいます。日頃から鍛えているお相撲さんは、肺活量があって自然と腹式呼吸ができている。大きな声を出すとか発声の面では、お相撲さんたちは鍛えている分、いい声が出るということだと思います。これは妻も同じことを言っていました。

 妻は、北海道で4歳から『江差追分』という難しい民謡を始めたんですが、最初にやらされたのが腹筋背筋だったそうです。体力をしっかりつけて、お腹に力が入らないと声が通らないので。『江差追分』は、息継ぎが短い民謡なので、体力がないと途中で息が切れてしまうんですね。それくらい、体力は大事なことだと思います。あとは、その人のセンスと生まれつきの問題です(笑)。

――なるほど(笑)。説得力があります。貴重なお話ありがとうございました。

【Profile】髙安(たかやす)/1990年2月28日生まれ、茨城県土浦市出身。身長188cm、体重181kg。田子ノ浦部屋所属。本名・髙安晃。15歳で角界入りし初土俵は2005年春(3月)場所、新入幕は2011年名古屋(7月)場所。2017年5月場所後に自身最高位の大関に昇進した。2020年1月場所後に大関から陥落するも、粘り強い相撲で幕内で相撲を取り続け、現在は東前頭三枚目。妻は演歌歌手の杜このみさん。

著者プロフィール

  • 飯塚さき

    飯塚さき (いいづか・さき)

    1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)、Yahoo!ニュースなどで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』では構成・インタビューを担当。2024年1月3日、TBS『マツコの知らない世界 新春SP』に貴景勝らと出演し、ちゃんこをはじめとする絶品「相撲メシ」を紹介した。

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