大相撲34歳ベテラン髙安が戦い続ける理由「15歳から雑草魂でやってきた。だから学生出身のエリートには負けたなくない」
髙安は「雑草魂」を胸に、関取として戦い続けている photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る
2024年5月の大相撲夏場所では6日間途中休場するも、優勝した大の里、2大関を破り大いに場所を沸かせて場所を終えた髙安関。大関経験者の意地を見せ、出場した取組は体の不調を感じさせない強さで白星を重ねた。
現在34歳。5月場所の振り返りから、ベテランとして昨今の若い力の台頭や力士のケガへの私見まで、幅広くうかがった。
大相撲・髙安インタビュー前編
【途中休場も見せ場の多かった5月場所】
――今回、場所前の稽古の様子や体の調子はいかがでしたか。
髙安 4月は巡業に参加して、ほかの部屋のお相撲さんと連日、いい稽古ができました。4月中に体を作ったので、場所前2週間はメンテナンス期間として、基礎運動やコンディショニング中心。15日間戦うためにちゃんと体を休めながら、土俵上では引き続き、いい内容の稽古ができていました。いつもやりすぎてしまうので、自分でストッパーをかけながらうまくできた、はずでした。
――先場所から、締め込みの色をえんじから紺に変えました。締め込みを変えた理由は?
髙安 後援者の方に贈っていただけることになったからです。前回変えたのが、たしか2021年の九州場所で、えんじにしました。今度はいままでつけたことのない色、紺色が渋いんじゃないかなと思って、自分で決めました。締め込みの色はなるべく華美にならないようにと、相撲協会から通達もありましたしね。
使い古したものより硬いので、場所が始まる2週間前から、毎日つけて体を動かして慣らして、多少柔らかくはしました。それでも若干硬いんですが、それを踏まえながら締め方の加減をコントロールするんです。きつすぎると固まって動けなくなるので、少し緩めに締めます。
ちなみに、7、8年前は、いまよりはるかにきつく締めていました。当時は、まわしを取ると強い横綱・大関がたくさんいましたから、どうしてもまわしを取られたくなかったんです。長く取っているので、少しでも白星につながるように、効率のいい方法を考えて取り組んでいます。
――5月は優勝した大の里関と、大関ふたりを撃破。強い姿を見せてくれました。
髙安 序盤戦から調子はメチャクチャよかったですよ。場所前の仕上がりもよかったし、やはり2日目(大の里戦)が一番よかった。しっかり腰が下りて浮かず、下がらずに前に攻め込めた。ああいう相撲が理想ですから、あれを15日間できればいいですね。心技体が充実していましたので、大の里に勝った時、"これだったらいけるな"という自信になりました。
しかし、翌日の朝に急に腰の痛みがきた。なかなか難しいですね。うまく調整したつもりでも、休んでしまうのは、まだまだ弱いということ。大関に上がる前から腰痛があって、うまく付き合ってきましたが、消耗品ですからね。部品は変えられないので、周りを強化していくしかありません。筋肉を強くして(腰を)サポートして、あとは体重をコントロールする。こちらは鍛えて、こちらは負担をかけないようにしてと、しらみつぶしに最善は尽くしています。
――計6日間の休場。その間はどう過ごしていましたか。
髙安 最初の4日間くらいは寝たきりでした。トイレにも、伝い歩きしないといけない状態。炎症が治れば、あとはトレーニングや治療といったコンディショニングができるんですが、今回は炎症が収まるまで長かったですね。ただ、調べて痛みの原因はわかったので、同じ失敗をしないようにしたいです。4月中の稽古でも万全にはやってきたので、再出場してからも、体が動いて焦らずできました。千秋楽に向かうにつれて体が張ってきましたし、逆にいい休養になったと捉えています。なんとか千秋楽まで取りきれてよかったです。
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プロフィール
飯塚さき (いいづか・さき)
1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)、Yahoo!ニュースなどで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』では構成・インタビューを担当。2024年1月3日、TBS『マツコの知らない世界 新春SP』に貴景勝らと出演し、ちゃんこをはじめとする絶品「相撲メシ」を紹介した。