<アスリート医学生対談>柔道世界女王・朝比奈沙羅と元プロ野球・寺田光輝が考える文武両道とは...テストを乗り越える「必殺技」も語った!? (4ページ目)
【悔しさが原動力「売られたケンカは買うタイプなので」】
ーー最後に、お互いに聞いておきたいことはありますか?
寺田 じゃあ、僕から。僕は競技が終わってから医学部へ進みましたが、朝比奈さんの場合、競技をしながらじゃないですか。そのモチベーションというか、そのタイミングを選んだ理由とは? たとえば、競技をやりきったあとに医学部に入る選択肢もあったんじゃないかなと思いますが。
朝比奈 たしかにそうですよね。
寺田 ラグビーの福岡さんも競技を終えてからです。唯一、朝比奈さんだけが本当に文武両道でやられてると思うんですよ。個人的にすごく興味があるので、その源にある思いを聞かせてもらえませんか?
朝比奈 悔しかったからですね。柔道では「勉強とか医学とか言って、よそ見をしてるから五輪に出れないんだよ」と言われて、逆に医学界隈からは「柔道の片手間で勉強しているようじゃ、医学部なんて到底無理」というふうに言われました。悔しいんだけどけっこう本質を突いているなんて自分で思えちゃったんですよね。だからこそ自分が両方を達成したら、みんななんにも言えなくなっちゃうんじゃないかと。それならやっちゃおうって。
寺田 なるほど。
朝比奈 そういうふうに言われて、前は泣いたりしてましたけど......今も思い出すと泣いちゃいそうなんですけど。父がけっこう熱血漢で「そんな人たちは無視して、前へ前へどんどん進んで行け!」というタイプなので、泣いても自分の道を進んでいこうと。小さい頃から反骨心は強かったので、自分自身が矢面に立っている以上は、私を見てくれている人たちにとって、憧れや理想の姿でいたいというがあったし、売られたケンカは買うタイプなので(笑)。泣いちゃうけど猛攻するというか、泣きながら強くなるってタイプ。だから今も泣きながら考え続けている感じなんです。
寺田 朝比奈さんは、本当に強いですよね。やっぱり自分は無理です。到底追いつけないです。
朝比奈 今度は私からの質問になりますが、寺田さんは部活を何かされてないんですか? 東海大は私も通っていましたがスポーツが強いですし、学部のほうでも、サークルのほうでも野球にはけっこう力を入れていると思うんですが......。
寺田 部活とかサークルは入ってないです。たぶん自分自身が適応できないんじゃないかなと。僕としては野球をするなら絶対に負けたくないと思うので、部活の雰囲気を壊しちゃうんじゃないかなと。
朝比奈 寺田さんは一途というか、なんていうか熱意がすごいですよね。
寺田 本当にその「武」の分を「文」のほうに振りきっていけたらと今は思っています。あと、自分は、朝比奈さんみたいに今はもう動けないですから(笑)。
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前編【<アスリート医学生対談>柔道世界女王で医学部合格の朝比奈沙羅に元プロ野球・寺田光輝は尊敬のまなざし「恐れ多すぎる存在です」】を読む
中編【<アスリート医学生対談>「勉強よりマウンドのほうが100倍プレッシャー」「私は柔道より勉強が...」元DeNA・寺田光輝と柔道家・朝比奈沙羅が語り合う!】を読む
【プロフィール】
朝比奈沙羅 あさひな・さら
1996年、東京都生まれ。ビッグツリースポーツクラブ所属。小学2年から柔道を始める。渋谷教育学園渋谷中・高から東海大学体育学部を卒業し、2020年に獨協医科大学医学部に入学。2021年6月、現役の医学生として出場した2021世界柔道選手権ブダペスト大会の女子78キロ超級で優勝。
寺田光輝 てらだ・こうき
1992年、三重県生まれ。小学3年から野球を始める。県立伊勢高校卒業後、2010年に三重大学教育学部に進学するも中退。2012年に筑波大学体育専門学群に入学し、野球部に所属。2016年にBCリーグ・石川ミリオンスターズに入団し、2017年NPBドラフト会議で横浜DeNAベイスターズに6位指名されて入団。2019年に引退。2021年に東海大学医学部に入学した。
著者プロフィール
門脇正法 (かどわき・まさのり)
マンガ原作者、スポーツライター。1967年、埼玉県生まれ。日本女子体育大学大学院スポーツ科学研究科修士課程修了。アニメ『ドラゴンボールZ』の脚本家である小山高生氏からシナリオを学び、マンガ原作者デビュー。特にスポーツアスリートの実録マンガを得意としており、『世界再戦ー松坂大輔物語ー』(集英社/少年ジャンプ)、『好敵手ー室伏広治物語ー』(同)、『闘球「元」日本代表ー福岡堅樹物語ー』(集英社/ヤングジャンプ)の原作を担当。現在はマンガの原作だけでなく、「少年ジャンプ」のスポーツ記事特集『ジャンスタ』を中心に、『webスポルティーバ』の「文武両道の裏側」など、スポーツライターとしても活躍中。著書に『バクマン。勝利学』『少年ジャンプ勝利学』(ともに集英社インターナショナル)などがある。
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