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<アスリート医学生対談>柔道世界女王・朝比奈沙羅と元プロ野球・寺田光輝が考える文武両道とは...テストを乗り越える「必殺技」も語った!? (3ページ目)

  • 門脇正法●取材・文 text by Kadowaki Masanori
  • 田中 亘●撮影 photo by Tanaka Wataru

【文武両道はいい意味で逃げ道だった】

ーー今のふたりにとって「文武両道」とはどんなものになりますか?

朝比奈 最近、自分と向き合っていろいろと考えることがあるんですが、文武の両方あったから、あんまり大きな挫折をせずにここまで来られたなと思っていて。もちろん、現役で医学部に落ちたり、五輪に行けなかったり、東海大を卒業後の医学部受験も何回も落ちていたりという苦労がありながらも、文武のどっちもあったからこそどっちかがしんどい時に、いい意味で逃げ道になっていました。そういう意味では文武両道は自分がいられる場所を増やすという感じですね。

ーー朝比奈さんにとって「文武」のどちらも自分の居場所だったんですね。

朝比奈 あと、小学生の頃から柔道はいつか引退する時が来るから、やめたあとの人生が長いというのを、漠然とですが現実的に考えていました。だから勉強は大事だなって。

ーー漠然としていたものがどんどん確信に変わってきていますか?

朝比奈 自分に自信が持てなくても、努力すれば必ずちょっとずつは積み上がってくるものだと思います。とくに勉強は、勉強したら勉強しただけ、点数もちょっとずつですけど上がっていく。やったらやっただけ強くなるのがわかるので、自分を好きになれる要因にもなるかなと思います。

 もともと自分自身にまったく自信がなくて、すごくネガティブなタイプなので、柔道もそうだし勉強もやっぱり自分が頑張った分だけ結果を出すことで、自信が生まれてきているのはあります。

この記事に関連する写真を見るーー寺田さんはどうですか?

寺田 僕は文武両道が本当にわからないんですよ。でも、朝比奈さんが「いい意味で逃げ道になっていた」とおっしゃっていたとおり、僕も勉強をやりたくないと思った時には野球に逃げていましたし、野球はおしまいだと思った時には、じゃあ医師を目指そうという、ある意味での逃げがあった。あっちこっちに行っていたのが僕の文武両道だったのかなと。自分が逃げてきたから、今の子どもたちに文武両道をやりましょうとは自信を持って言えないし。文武両道ってすごく難しい話だと思いながら朝比奈さんの話を聞いていました。

ーー文武両道という言葉は、ポジティブな意味だけではないと。

寺田 そうかもしれません。でも今の日本においては、絶対に勉強はできたほうがいいのも事実だと思います。めちゃくちゃ賢くなるとかそういうことではなくて、競技に打ち込んでいる学生なら、赤点をとらないくらいの点数をどうやって効率的にとろうかとか、勉強の仕方を学んでおくだけでも、その競技が終わったあと、次のステップに進みやすいんじゃないかという気はしています。別に文武両道にする必要はないですけど、もう片方の準備をしておくことはすごくいいんじゃないかな。ちょっと偉そうなことを言っていますけど、僕が全然できなかったことを踏まえて、今はそういうふうに思いますね。

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