<アスリート医学生対談>柔道世界女王で医学部合格の朝比奈沙羅に元プロ野球・寺田光輝は尊敬のまなざし「恐れ多すぎる存在です」 (5ページ目)

  • 門脇正法●取材・文 text by Kadowaki Masanori
  • 田中 亘●撮影 photo by Tanaka Wataru

【この知識が現役時代にあれば全然違ったかも】

ーー寺田さんはどうですか?

寺田 楽しかったのが筋肉の動きや繊維の仕組みの勉強です。付随して代謝とかアミノ酸のこととかも。この知識が現役時代にあれば、トレーニングのやり方も全然違ったのになと思うことが多々あって。ちょっと後悔もあると同時に、今頑張っているアスリートに還元できるものがちゃんとあるんだと実感できたのでよかったなと思いました。

ーー難しかった授業は?

寺田 難しかったのは解剖です。僕は編入で1年の秋学期から医学部に入りましたが、入学後すぐ解剖実習だったんです。あまり知識もなくて、医学部の生活にも慣れてない状況での実習で、ご献体にどういう気持ちで向き合えばいいのかが全然わからなくて。自分たちのために、ご献体として提供していただいているのに、僕の知識が本当にないまま、手だけを動かすような時間があったんです。自問自答していたというか、命ってなんだとか、わかんない感じになった時期がありました。それはしんどくて、いろいろ考えました。

ーー朝比奈さんは、解剖実習についてはいかがでしたか?

朝比奈 自分は小学生の頃から、(医師の)父の職場見学のような形でご献体を見たり、高校生の時には結腸がんの摘出手術を見させてもらったりしました。だから、解剖実習自体は問題ありませんでした。でも今年の夏、法医学の研究室に配属になって、異常死体と呼ばれるご遺体の解剖を見学しまして、医療は生命を助けるほうに目が行きがちだけど、死と向き合うのが医療の現場なんだなとつくづく感じています。

ーー中編では、スポーツ経験が勉強に活かされている点や将来の展望などをお聞きします。

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中編【<アスリート医学生対談>「勉強よりマウンドのほうが100倍プレッシャー」「私は柔道より勉強が...」元DeNA・寺田光輝と柔道家・朝比奈沙羅が語り合う!】を読む

後編【<アスリート医学生対談>柔道世界女王・朝比奈沙羅と元プロ野球・寺田光輝が考える文武両道とは...テストを乗り越える「必殺技」も語った!?】を読む


【プロフィール】
朝比奈沙羅 あさひな・さら 
1996年、東京都生まれ。ビッグツリースポーツクラブ所属。小学2年から柔道を始める。渋谷教育学園渋谷中・高から東海大学体育学部を卒業し、2020年に獨協医科大学医学部に入学。2021年6月、現役の医学生として出場した2021世界柔道選手権ブダペスト大会の女子78キロ超級で優勝。


寺田光輝 てらだ・こうき 
1992年、三重県生まれ。小学3年から野球を始める。県立伊勢高校卒業後、2010年に三重大学教育学部に進学するも中退。2012年に筑波大学体育専門学群に入学し、野球部に所属。2016年にBCリーグ・石川ミリオンスターズに入団し、2017年NPBドラフト会議で横浜DeNAベイスターズに6位指名されて入団。2019年に引退。2021年に東海大学医学部に入学した。

プロフィール

  • 門脇正法

    門脇正法 (かどわき・まさのり)

    マンガ原作者、スポーツライター。1967年、埼玉県生まれ。日本女子体育大学大学院スポーツ科学研究科修士課程修了。アニメ『ドラゴンボールZ』の脚本家である小山高生氏からシナリオを学び、マンガ原作者デビュー。特にスポーツアスリートの実録マンガを得意としており、『世界再戦ー松坂大輔物語ー』(集英社/少年ジャンプ)、『好敵手ー室伏広治物語ー』(同)、『闘球「元」日本代表ー福岡堅樹物語ー』(集英社/ヤングジャンプ)の原作を担当。現在はマンガの原作だけでなく、「少年ジャンプ」のスポーツ記事特集『ジャンスタ』を中心に、『webスポルティーバ』の「文武両道の裏側」など、スポーツライターとしても活躍中。著書に『バクマン。勝利学』『少年ジャンプ勝利学』(ともに集英社インターナショナル)などがある。

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