ロコ・ソラーレ藤澤五月が当時流行していた「ビクトリー!」と叫んでいた合宿 それがカーリング人生「すべての原点」だった (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・構成 text by Takeda Soichiro

初の海外合宿はかなり贅沢な時間だった

 高校2年の秋には、初の海外合宿を敢行しました。カナダのアルバータ州で当時、ジュニアのカテゴリーで強かった女子の『御代田AIM』、男子は常呂の『INFINITY』というチーム、あとはチームを立ち上げたばかりの中部電力、そして私たちステイゴールドIIの4チームでの合同合宿でした。それに参加すると、高校の京都・奈良への修学旅行を諦めないといけない日程だったのですが、「京都よりアルバータ!」とあんまり迷わなかった記憶があります。

 エドモントンという都市の郊外にあるギボンズという小さな街で、世界的アイスメーカーのティム・ヨーさんのご自宅にホームステイさせてもらって、元カナダ王者のジュール・オーチャーさんにコーチをしてもらいました。そのうち2日間は、当時ジュールさんがコーチをしていて、ちょうどその年に世界選手権を勝ったケヴィン・マーティンさん(カナダ代表/2010年バンクーバー五輪金メダル)に教えてもらう機会までありました。

 一般の方にはマニアックな名前で、いずれも知らない方のほうが多いかもしれませんが、ティムさんも、ジュールさんも、カーリング界ではマーティンさん同様にレジェンド的存在です。今思えば、かなり贅沢な時間だったんだなと思います。

 マーティンさんからは、トップウェイト(もっとも速い石)の出し方、デリバリーの際の石の置く場所、スイープの時の身体の角度などなど、技術的なことをたくさん教えてもらいました。また、ちょっと専門的な「ポジティブリリース」という技術があるのですが、その時は理解できませんでした。

 でも、それから10年ほど経ってから、JD(ジェームス・ダグラス・リンドコーチ)から同じことをコーチングされて、「ああ、あの時、マーティンが言ってたのはこれだったのか!」ということがありました。

 メンタル的な部分では、試合の向き合い方としてジュールさんが「大会前はまったくアイスに乗らなくていい」と、おっしゃっていたのが印象的でした。

「コンディションとして、体を休める意味もあるけれど、アイスから離れることで『アイスに乗りたい』『早く試合をやりたい』というモチベーションを作るんだ。ちょっとみんな練習しすぎだよ」という話は、今でも時々思い出します。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る